はじめに
障害者福祉施設では、利用者の特殊なニーズに合わせた感染対策が不可欠です。
この記事では、その課題と解決策を探り、Covid-19を含む感染症に対する具体的な対策を紹介します。
障害者福祉施設の現場で直面する特有の問題と、それに対応するための効果的な戦略を掘り下げます。
結論
•障害のある人の特性を理解し、施設の特性に合ったオーダーメイドの感染対策支援が必要である。
・自施設を分析して、自施設の感染対策を構築する
・日頃より、アクションカードを用いた発生シュミレーション訓練を行う
・クラスターや感染症の発生を振り返る
・重症例・死亡例を出さない視点を持つ
感染症情報サイト・本の紹介
厚生労働省感染対策マニュアル・業務継続ガイドライン等https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15758.html
![](https://seisin-kansentaisaku.com/wp-content/uploads/2023/11/image-15-1024x416.png)
感染対策の参考になる本の紹介
![](https://seisin-kansentaisaku.com/wp-content/uploads/2023/11/image-16-1024x418.png)
障害者福祉施設の特徴
障害者福祉施設では、集団活動が多く、マスクの着用や手洗いが困難な場合があります。
共有物品や場所の多さも感染リスクを高め、感染症の症状を伝えるのが難しいことがあります。
これらの特殊性を理解し、対策を講じることが重要です
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障害者福祉サービスが受けられる障害の種類
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障害福祉サービスは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害など様々な障害の種類に対応しています。それぞれの障害に応じて、感染対策のアプローチも異なります。
1 身体障害
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2 知的障害
重症心身障害児(者)
咀嚼・嚥下、排泄、呼吸機能障害、骨格異常など合併症や二次障害
誤嚥性肺炎・尿路感染・呼吸器関連肺炎・イレウス・褥瘡(皮膚感染症)
区分 | 知能指数 (IQ) |
最重度知的障害 (Ⅰ) | 20以下 |
重度知的障害 (Ⅱ) | 21~35 |
中度知的障害 (Ⅲ) | 36~50 |
軽度知的障害 (Ⅳ) | 51~70 |
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3 精神障害
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4 発達障害
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利用者の特性(自施設の状況を知る)
•年齢は、若年層から高齢者の割合は?
10代・20代・30代・40代・50代・60代・70代
•活動状況:ベッド上から車椅子、自力歩行の割合は?
ベッド上 % 車椅子 % 自力歩行 %
•身体合併症:心疾患、腎臓疾患、糖尿病、高血圧、誤嚥
利用者の方の特徴を理解し対策を立てる。
職員の特性(自施設の状況を知る)
•男女比 (共有スペースの トイレ 更衣室)
•年齢 (子育て世代・介護世代・65歳以上の職員数)
•職種 (利用者に接触距離が近い職種)
•情報共有と役割分担の明確化
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構造の特性
•利用者共有スペースの洗い出しを行う
食堂、共有トイレ(数)
洗面所、浴室、送迎バス・車
•共有物品の洗い出し
レクレーション物品
業務作業用物品、日用品
•利用者の動線
•職員の動線
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5類以降後のCovid19感染対策
Covid19 5類以降の感染対策変更点
5類感染症移行後 | |
発生動向 | ・定点医療機関からの報告に基づき、毎週月曜から日曜までの患者数公表 |
医療体制 | ・幅広い医療機関による自律的な通常の対応 ・新たな医療機関に参画を促す。 |
患者対応 | ・政府→一律に外出自粛要請はせず ・医療費の1から3割を自己負担 入院医療費や治療費の費用期限を区切り軽減 |
感染対策 | ・個人や事業主に判断を委ねる。 ・基本的対処方針などは、廃止 |
ワクチン | ・令和5年度においても、引き続き、自己負担なく接種 ・高齢者など重症化リスクが高い方等 |
感染対策の問題点
•把握できないCovid19感染症者が増加する。
•日常的に陽性者と接触するリスクが高くなる
•施設内にCovid19陽性者が入り込む数が増える
•初発例発見時には、2日後クラスターになる可能性が高い
どのような感染対策が必要なのか
通常の標準予防策(手指衛生・個人防護具の着脱技術)の実践
症状のモニタリングを行い、早期に発見し対策する
重症化しやすい利用者の把握と発症時の取り決め(BCP)の情報共有
感染対策マップを作ろう
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・手が洗える場所
・手の消毒ができる場所
・手袋・デイスポエプロンが設置してある場所
・手袋・マスク・ディスポエプロンが廃棄できる場所
構造の図面をもとに、職員が感染対策を行える場所を共有する。
Covid19陽性利用者が発生した時の問題点
職員の手袋・フェイスシールド・マスクの保管問題(汚染しやすい)
保管している場所は、最も職員がて触れる回数が多い場所の1つです。
整理整頓し、清掃しやすい環境を整えましょう。
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物品が多いと個人防護具が汚染しやすい理由
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聴覚障害がある方への感染対策の工夫
利用者さんが座る視点に感染対策の協力を得る工夫(例)
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職員動線を共有するアイデア
(マニュアルを視覚化する工夫)
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発生したらこの写真に個人防護具を設置する工夫
(文章では、伝わらない場合)
職員教育が間に合わない場合や、職員の理解が困難な場合
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Covid19疑れいが発生した場合の問題点
共有スペースの問題
・共有トイレ
・共有洗面所
・食堂・ホール
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共同で作業するスペースや作業療法などを行う場所の感染対策
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Covid19 第10波の準備と戦略
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BCP=業務継続計画 (自施設分析・課題を抽出)
以下項目をチェックし、施設の感染対策の弱い項目を見つけて対策を検討しましょう。
1.体制整備
🔲 施設の感染対策の課題を明確にする(問題点の共有と解決)
🔲 第10波の感染対策と計画を立てる
🔲 利用者と職員の健康状態把握
🔲 感染発生時・拡大時の対応(夜間・休日時の対応)
2.役割分担
🔲 施設長(管理者): 施設全体の管理
🔲 事務担当:院内・外担当窓口
🔲 医師:医療・治療の提供(不在施設の場合連携状況)
🔲 看護職員:感染対策の計画・指導、利用者・職員の管理
🔲 保育士・指導員:感染対策計画共有・実施状況確認
3.感染対策研修と訓練
🔲 日時の取り決め(第10波流行前・後)
🔲 対象:全職員(感染対策協力が得られる利用者)
🔲 感染対策教育と訓練:感染症発生時の行動確認
(実際に動けるか? 評価する)
4.利用者の健康管理
🔲 利用者の既往歴(心疾患、癌、糖尿病、腎臓疾患、高血圧)
🔲 利用者の体調を把握、体温、脈拍数、血圧、酸素飽和度、呼吸数
🔲 利用者の体調が悪い場合の様子を共有する方法を構築
🔲 利用者に対し、手の消毒やマスク着用を教育、指導する
🔲 利用者の感染対策実施状況を把握し、不足している部分を支援
4-1重症化しやすい利用者を把握しておく
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4-2 まずはバイタルサインを考える
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バイタルサインとは何を見つけるの?
血圧・脈拍・呼吸・体温・酸素飽和度・意識レベル・尿量
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5.利用者の体調観察ポイント
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5-1 利用者の感染状況の確認
•患者さんは、症状を表出できるのか?
•できない場合、まずバイタルサイン測定・意識レベルの観察
•qSOFAの測定(簡易的敗血症測定に活用)
🔲収縮期血圧100mmhg以下🔲呼吸数22回以上🔲意識レベル低下
•2つ以上で感染症を疑ってください。
6.職員の健康管理
🔲 感染症の既往やワクチン接種状況を把握
🔲 職員の体調把握
🔲 体調不良時の報告しやすい環境を整える
🔲 職員への感染対策の方法、教育、指導を行う
🔲 業務中に感染した場合の方針を明確にし、対応を準備
🔲 職員の出勤率により柔軟に業務内容を変更(出勤率30%、50%等)
7標準的な感染予防策(平時から取り組む)
🔲 利用者に接触する前、接触後に手の消毒が実施できているか
🔲 手袋を脱いだ後に手の消毒を実施しているか
🔲 食事支援前後に手の消毒が実施しているか
🔲 排泄支援前後で手の消毒が実施しているか
🔲 医療処置時前後で手の消毒を実施しているか
7-1 障害者施設独自の手の消毒が必要な場面がある
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8.利用者の感染予防策
🔲 食事前、排泄後の手洗い状況を確認する
🔲 手指を清潔に保つために必要な支援を検討する
🔲 共有物品の使用状況把握し、清潔に管理する
9.感染対策の環境清掃
🔲 整理整頓、清掃を計画的に実施し、実施状況を評価する。
🔲 換気の状況(方法や時間)を把握し、評価する
🔲 トイレの清掃、消毒を計画的に実施し、実施状況を評価
🔲 複数の職員や利用者が触れる場所の把握と清掃
10.食品衛生
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🔲 食品の入手、保管状況を確認・評価
🔲 調理工程の衛生状況を確認・評価
🔲 調理職員の衛生状況を確認する
🔲 課題を検討し、対策を講じる
11.感染症発生時の対応(発生状況把握)
🔲 感染者及び感染症疑い者の状況を把握し、情報を共有する
🔲 施設全体の感染者及び感染疑い者の発生状況を調査し把握する
12.感染拡大の防止
🔲 医療関係職は、感染者、疑い例の対応方法を理解し行動できる
🔲 支援職員は、感染者、疑い例の対応方法を理解し行動できる
🔲 感染者、疑い例と接触した関係者の体調確認を行う
🔲 ウイルスや細菌に効果的な消毒を選定し、消毒を実施する
🔲 職員の感染対策状況を確認、感染対策を促す
13.医療機関や保健所、行政関係機関との連携
🔲 感染者及び感染疑い者の状況を報告し、対応を確認する
🔲 診療の協力を依頼する
🔲 医療機関、保健所からの指示内容を施設、事業所内で共有する
14.関係者への連絡
🔲 施設、法人内での情報共有を構築、整備する
🔲 利用者家族や保護者との情報共有体制を構築、整備
🔲 相談支援事業所との情報共有を構築、整備する
🔲 出入りする業者との情報共有体制を構築、整備する
15 入所・入居系
🔲 面会時の対応方法について確認できている
🔲 帰宅希望時の対応を確認できている
🔲 感染者、それ以外の方の支援を分けた対応を検討できている
🔲 検査を受けられる体制を整えている
🔲 医療機関を受診する体制を整えている
🔲 シフトを調整し、職員の支援体制を構築する
16 通所系
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🔲 体調の確認方法と体調不良の対応方法について、家族及び相談支援専門員などと事前調整する
🔲 施設利用中の体調不良者の対応方法を構築する
🔲 休業基準を明確にする
17 訪問系
🔲 体調不良時の対応方法について、家族及び相談支援専門員などと事前調整する。
🔲 自宅療養できない利用者の滞在先を検討する。
🔲 職員が不足した場合の支援体制を構築する。
複数の感染症の同時流行に備える
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インフルエンザウイルス感染対策
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•ワクチン接種から効果が現れるまで約2週間、約5ケ月継続
•利用者・職員のワクチン接種率(未実施者)を把握しておく
•症状がCovid19とほぼ同じ(発熱・咽頭痛・頭痛・咳)
•発症から数時間では、検査陽性にならない場合もある
•職員の健康調査(症状がある場合は勤務を検討)
•職員・利用者双方に不織布マスク着用(飛沫予防)
•陽性利用者(個室が望ましい、大部屋であれば1.5m離す)
•就業制限(学校保険安全法規則第19条)
•発症後5日、もしくは解熱後2日
感染性胃腸炎
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•アルコール消毒剤が効きいくい
(手指消毒剤、環境アルコールクロス)
•流水と液体石鹸での手洗いを必ず実施できる体制・教育
•感染経路は接触感染が中心(接触部位、共通物品の消毒)
•嘔吐・下痢症状の対応準備(トイレで嘔吐した場合や、食堂で下痢など)
•経口感染(食事、水分、薬、おやつ)
•複数名で役割分担できるよう準備する。
•夜間や休日で職員が少ない状況での発生を想定しておく
•吐物や下痢発生時の物品・消毒薬セットを準備しておく
疥癬
![](https://seisin-kansentaisaku.com/wp-content/uploads/2023/11/image-41.png)
通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
ヒゼンダニの数 患者の免疫 | 数十匹 正常 | 100万から200万 弱い |
潜伏期間 | 1から2ケ月 | 4から5日 |
感染力 | 弱い | 極めて強い |
主な症状 | 赤いぶつぶつ(発疹、丘疹、結節) 疥癬トンネル | 厚い垢が増えた状態、多量の落屑など |
痒み | 強い | 不定 |
症状が出る部位 | 全身 | 全身 |
隔離 感染対策 | 可能であれば個室 標準予防策 | 原則個室 接触予防策、複数の場合は集団隔離 |
まとめ
障害者福祉施設では、感染症の発生を振り返り、重症例や死亡例を出さないための視点が重要です。常に自施設を分析し、感染対策を構築することが大切です。
こんにちは、Springです。
障害者福祉施設の感染対策は重要です。
その施設にあった、オーダーメイドの感染対策が必要になります。
現場にラウンドし、実際の問題点を共有して、定期的なフォロー
を行うことが第10波までにできることかと思います。
まずは、問題点を共有することから始めてみましょう!