2022年は、沢山の精神科病院での新型コロナウイルスのクラスターが発生しました。
自施設や地域での対応には、時間と労力がかかる。
いざ、精神科病院でどのような場面に感染対策が必要なのか。
みなさんと一緒に精神科病院の感染対策ラウンドを
考えてみたいと思います。
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結論:精神科病院感染対策ラウンド表を作成する
・精神科病院の組織・病棟の機能別・施設構造の問題を知る
・患者さんの高齢化と身体合併症の増加から感染症が重症化しやすい
・精神疾患の特性を生かした標準予防策を実施する
精神科病院での感染対策ラウンド
管理体制
医療法に基づく内容が精神科病院内で体制が維持できているか
- 感染対策委員会の設置があるか
- 感染対策委員会の指針・規定がマニュアルにあるか
- 感染対策委員会の報告・連絡・相談体制
- ICTの役割
- 感染症集団発生時の対応
- 感染対策マニュアルの作成状況・更新
- 咬傷やHIV曝露時や相談先のマニュアルはあるか
職員への教育
- 年間2回 全職員対象に感染対策教育を実施している。
- 職種別の受講率
- 医師への教育
- 臨床心理士への教育
- 精神社会福祉士への教育
- 理学療法士・作業療法士への教育
- 介護福祉士への教育等
- 清掃委託業者・リネン運搬業者への教育
感染対策向上加算への参加・サーベイランス
- 感染対策向上加算を取得しているか
- サーベイランスに参加しているか
- JANISやJ-sipheへの参加の有無
- 医療関連デバイスサーベイランス(BSI・UTIなど)
- 症候群サーベイランスの活用
- 手指衛生サーベイランス実施状況
検査体制・抗菌薬使用状況
院内での臨床検査体制
検査の種類
細菌検査の有無
ウイルス迅速検査の種類・検査キット在庫数
検査外部委託の場合、結果判明までの期間
抗菌薬使用前に細菌培養検査は実施されているか
抗菌薬の届出制や許可制を活用しているか
病棟別の使用状況を確認できているか
アンチバイオグラムを作成しているか
感染症の早期発見・早期介入体制
- 症候群サーベイランス(発熱や呼吸器・消化器症状等)
- 職員の健康調査
- 病棟構造の図面を活用し、感染対策を検討している
- 病棟機能別の問題点把握(認知症・アルコール依存・児童思春期・急性期スーパー救急病棟)
精神科病院の感染対策場面
- 畳の部屋の感染対策
- 保護室の感染対策(観察廊下も含む)
- 患者共有スペースの感染対策(ホール・共有トイレ・食堂・浴室・洗面所)
- 集団作業療法時の物品管理・患者間の距離
- 汚染した抑制帯や車椅子の安全ベルトなどの洗浄・消毒・乾燥管理
- 精神科デイケア・訪問看護時の感染対策
- 病棟での標準予防策・感染経路別予防策の状況
- 療養環境や職員が共有する物品(鍵・抑制帯取り外し器具)の管理
- 患者・職員が高頻度に接触する場所の環境清掃
集団発生時の対応
- 集団活動の状況確認
- 祝日・時間外発生時の対応マニュアル
- 感染症発生時の衝動対応
精神科病院 配膳室の感染対策
精神科病院では、疾患特性上危険物となる物品をベッドサイドに保管することが困難な場合が多い。
口腔ケア物品なども、異食等の患者が入院していれば、鍵のかかる配膳室等で保管することもある。
その場合、以下観点からラウンドを行ってみる。
- 歯ブラシの管理体制(洗浄・消毒・保管)
- コップの管理(ビニールテープなどで名前を貼っている)
- 歯磨き粉の管理
- (喀痰より薬剤耐性菌保菌者などの取扱いはできているか・区分けが可能か)
- 入れ歯の管理
- 冷蔵庫の清掃(回数・食物とアイスノンが一緒に保管されていないか)
- 冷蔵庫内の、食品賞味期限は守られているか
- 患者が口をつけたペットボトルの飲料水は、48時間で廃棄されているか?
- 経管栄養のの保管、準備時(手指衛生は実施しているか、洗浄・消毒・乾燥・交換頻度)
- 経管栄養に使用するブラシやスポンジ管理は適切か
- 胃瘻接続チューブなどの備品は、適切に管理されているか
- (洗浄・消毒・乾燥・交換基準設定)
- 経管栄養後の薬剤投与用シリンジ、薬液懸濁容器等は適切に管理できているか
- とろみ粉などを使用する場合、保管容器は清潔か
- 電子レンジ・冷蔵庫・食器乾燥は清掃しているか
- 患者さんのおやつや補助食品は、適切に保管されているか(床から30cm以上に保管等)
例:一般病院と比較した際に、対応が困難な視点を入れて作成してみました。
ラウンドチェックし各施設の強み・弱みを確認する
ラウンドで弱い部分のラウンドチェック表を作成してみる。
例:手指消毒剤の使用が困難である
では、自施設はどのような場面で手の消毒が困難なのか
職種によって違いがあるのか。
WHOの手指衛生5つの場面を精神科施設用に活用することもできる。
まとめ
他施設の精神科病院ラウンド時、何に困っているのか知ることが必要である。
困っていることを明確にできるツールを作成し、共通する問題が多い場合
優先度を一緒に考え、定期的なフォローUPがあれば精神科病院のICTラウンドは向上する。
提案したことを、そのままにせず確認する仕組みが重要と思います。
友人の急性期病院ICNより、精神科病院のICTラウンド表の相談を受けました。参考文献も少ないため、今後は精神科病院のICTラウンド調査研究も行なってみたいと思います。
このブログも1年が経過しましたので、今後はまとめたものを作成したいと思います。