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通常疥癬は、角化型疥癬よりも感染力は低い。
しかし、なぜ精神科病院での通常疥癬の集団発生が起こるのだろうか?
精神科病院患者で皮膚と皮膚との長時間接触する場面は・・・どのような場面があるのか
精神科病院ならではの、患者さんの行動、集団生活に着目したい。
1.結論
- 患者さん同士の皮膚接触する場面を確認する(長椅子に座っている場合)
- 患者さんと職員が皮膚接触する場面の対策を実施する
- 入浴介助や清拭時に全身の皮膚観察を行う
疥癬とは・・・
疥癬とは、ヒト皮膚疥癬層に寄生するヒゼンダニの感染により発症。
ヒゼンダニの虫、糞や脱皮した抜け殻など
に対するアレルギー反応
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2.ヒゼンダニの生態
ヒゼンダニの特徴 | 詳細 |
---|---|
形状 | 卵形 |
観察時の形状 | 圧迫される円盤状態に見えることが多い |
雌成虫の体長 | 約400μm |
雌成虫の体幅 | 約325μm |
雄成虫 | 雌の約60%の大きさ |
成長過程 | 卵→幼虫→若虫→成虫 (脱皮を繰り返しながら成長) |
卵の孵化期間 | 3~5日 |
生活環 | 約10~14日間 |
活動場所 | 皮膚表面、皮膚角質層内、毛包内 |
産卵行動 | 産卵に適当な場所で穴を掘り、雄を待つ。交尾後、角質層にトンネルを掘り、寿命が終わるまで4から6週間、1日2から4個ずつ産卵 |
栄養源 | 滲出液や組織液(吸血性ではない) |
環境適応性 | 乾燥、(16℃以下で動けない)、高温(50℃、10分間で死滅)に弱い。皮膚から進行すると感染力が数時間で低下すると推定。 |
ヒゼンダニを見つける道具として、ダーモスコープがあります。
高額ですが、1つあると便利と思います。
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ヒゼンダニの解説も記載がありますね。
3.ヒゼンダニの病型分類
一般的に疥癬(古典的疥癬)
- 一般的に見られる疥癬
- 臨床症状は多岐にわたる。
- 雌成虫が患者の半数例で 5 匹以下(健康成人の場合)
- ステロイド剤や免疫抑制剤投与中の患者、悪性腫瘍や糖尿病、透析中の患者、高齢者などでは免疫が低下した状態で、ヒゼンダニの寄生数が多いこともある
角化型疥癬
- 一般的に通常疥癬よりも感染力が強い
- ヒゼンダニの寄生数は100~200万匹、時として500万匹以上
4.感染経路について
感染経路 肌と肌の直接接触が主たる感染経路。
感染後、約1~2カ月の無症状の潜伏期間(高齢者では数ケ月)を置いて皮疹などの臨床症状が現れる。
潜伏期間、この期間にはヒゼンダニの数も少ないので,他の人へ感染を引き起こす可能性は低い。
通常疥癬と角化型疥癬はヒゼンダニという同じ病原体による感染症ではあるが、感染力および感染拡大様式が大きく異なる。
通常疥癬では一人の患者に寄生するヒゼンダニの数は少ない。
宿主から離れたヒゼンダニは時間とも感染力が低下する
そのため通常疥癬患者から感染が成立する状況としては、同室患者が使用した寝具を使用する、長時間手を繋ぐなど、濃密な接触の場合に限られ、短時間の接触や衣類・リネン等の媒体媒体を介して感染することは少ないと考えられる。
角化型疥癬では多数のヒゼンダニが患者の皮膚角質層内に存在するため、直接的な接触その他、剝がれた角質層が飛散・付着することにより、肌と肌の直接接触を介さずに感染が成立することがある。
そのため見舞客など短時間の接触や、直接接触を除くリネンなどの間接的な接触を介して感染が拡大し、集団感染を引き起すことがある。
施設内の職員を介する感染もある。
5.精神科病院での感染経路場面と対策
・患者から患者への感染経路遮断と長椅子での皮膚接触
- 集団で入浴する場面の観察を行う。
- 浴室に入る前の長椅子に座って待っている患者さんは、皮膚と皮膚は接触していないか?
- 浴室に入る前、衣類を脱いで長椅子に待っている時間、接触皮膚部位はどこか
- つなぎ衣類などを着用している場合、通常の皮膚観察が困難な場面が多い
- 上腕の外側や側胸部や背中は接触していないか
対策として
転倒・転落をしっかりアセスメントした上で、長椅子を撤去する。
個別の椅子に変更し、患者と患者の皮膚接触部位の距離を開ける。
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すべらない、転倒しにくい椅子を活用して患者間の皮膚接触を避ける対策も、
疥癬発生時は検討する。
次に患者から患者、患者から職員への手を繋ぐ・触れる患者について
・よく患者同士で手を繋ぐ、職員に触れる患者をピックアップしておく。
・皮膚病変の観察を行う。(衣類で隠れている部分)
・以下のような図があるとどの部位に発疹があるか情報共有しやすいです。
・どの部位に皮膚病変が多いか確認しやすい。(どの部位が多いのか?)
・入浴介助時や清拭時に全身の皮膚観察を行う
・重篤な基礎疾患、ステロイド剤や免疫抑制剤投与中など免疫低下している患者を把握する。
6.疥癬の感染予防について
対応項目 | 通常疥癬 | 角化型疥病 |
---|---|---|
手洗い | 励行 | 励行 |
身体介護 | 特別な感染予防策は不要 | 予防衣・手袋の着用。 使用後は飛び散らないようにポリ袋に入れる |
入浴 | 一般的な方法 | 入浴は最後とし、浴槽や流しは水で流す。 脱衣所は、掃除機をかける(フィルター付) |
居室・環境整備 | 通常 | 必要 |
タオル・足ふきマット類の管理 | 一般的な方法 | 1回だけ熱乾燥、またはピレスロイド系殺虫剤散布後、掃除。ディスポの足ふきマットなども検討する |
病室管理 | 不要 | 必要(隔離期間のみ) |
シーツ・寝具・衣類の交換 | 一般的な方法 | 治療の度に交換(可能な範囲で) |
洗濯物の運搬時の注意 | 一般的な方法 | 落屑等が飛び散らないようにポリ袋などに入れて運搬 |
洗濯 | 一般的な方法 | 以下いずれかの方法で検討する ・普通に洗濯後に乾燥機を使用する ・50℃で10分間熱処理後普通に洗濯 ・密閉してピレスロイド系殺虫剤を噴霧してから普通に洗濯 |
個室への隔離 | 不要 | 隔離期間は治療開始後1~2週間 |
接触者への予防治療 | 雑魚寝状態なら同室者・家族・友人・同棲者に予防治療を検討 | 同室者は症状の有無にかかわらず予防治療を検討する。 職員は患者との接触の頻度・密度を重点的に予防治療を検討する |
7.再感染・再燃に注意
・疥癬治療後治癒と判定されても数ケ月後に再度診断される症例がある
・同室者や接触家族・職員の疥癬皮膚状態確認
・患者さんは、皮膚症状があっても痒みを表出できない場合が多い
・患者集団の理解(年齢・基礎疾患・免疫力・行動パターン・どのような集団なのか)
・初発患者の対策(感染対策チームや病院・施設管理者へ相談)
・寝たきりで自力移動がすくない患者集団での発生?
・集団活動が多く、活動性や密着時間、接触が多い患者集団か?
8.まとめ
- 1例発生したら、入浴介助時、清拭時に全患者の皮膚病変を観察する
- 初発例が通常疥癬か角化疥癬か皮膚科医師に確認しておく
- 精神科では、皮膚と皮膚が患者同士で接触する場面を職員から情報を得る
こんにちは、SPRINGです。
精神科病院では、患者と患者の密接な皮膚接触場面が存在します。
繋ぎ衣類などの場合、皮膚が露出していない部位の観察が疎かになります。
日頃、観察できない部位も入浴介助や全身清拭時は、
患者さんの全身皮膚観察を行えます。
症状が表出できにくい患者さんや、精神状態が悪化している患者さんなども
注意して皮膚の状況を観察しましよう。
患者さんの身体と精神症状を同時に観察することを疥癬から学びました。