こんな場面で困っていませんか?
ベテラン看護師A
昨日、喀痰培養からMRSA薬剤耐性菌が出た患者さん。
熱が38.5°に上がっちゃって、震えがあるのよ。
先生からは、VCMの抗菌薬指示が出たけど、
このVCMなんて読むのだろう・・・・・・
後輩から聞かれてもわからない・・VCM
略語 理解不可能。
この薬がどのような目的で処方されているかわからない。
と悩んんでいる あなた
この記事を読めば感染対策のヒントにななる
結論
- どの臓器で、どの細菌による感染症なのか医師と確認する
- 抗菌薬投与回数の違いの意味を知る
- 抗菌薬の感受性・耐性を知る
そもそも抗菌薬とは?
細菌感染の治療で使用される
ウイルス感染症には、効果がない
抗菌薬は、細菌を殺しまたは増殖を抑えることで
人体の自然防御機構効果により排除する。
抗菌薬の評価
抗菌薬 強い・弱いは、使用しない ❌
抗菌薬 スペクトラムが狭い・広い ○
抗菌薬 活性度が高い・低い ○
抗菌薬治療の考え方
1 どの臓器で感染症は発生しているのか(どのような免疫状態か)
👇
2 どの細菌 微生物での感染症なのか
👇
3 細菌に効果がある抗菌薬治療
統合失調症患者発熱事例で紹介
😷 統合失調症・糖尿病合併で発熱があり
抗精神薬の副作用で白血球数が低下している患者
クロザリル(クロザピン)内服中に喀痰培養から
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が検出された。
血液培養検査結果がきていない。
胸部レントゲン検査で、肺炎を疑われている。
この事例の考え方として
どの臓器で感染症なのか:肺臓器
どの微生物で:MRSA
どの抗菌薬で:バンコマイシン
医師と確認し、抗菌薬投与へ思考を確認してみましょう。
精神科施設では、免疫が低下した患者さんも存在します。
治療上の副作用による白血球低下が起こる場合
抗精神薬クロザリルと免疫低下?
治療抵抗性の統合失調症のみに適応
副作用:無顆粒球症 心筋炎 痙攣
症状:発熱 悪寒 倦怠感 リンパ節腫脹 喉の渇き 咽頭不快感 よだれ
免疫低下している患者さんたちは、精神科施設内のどこに多く入院しているのか
病棟のどのゾーンに多く免疫不全のリスクが高い母集団が存在するのか
例
免疫不全 | 病棟や部署 |
---|---|
糖尿病合併 | 身体合併症病棟 認知症病棟 |
肝臓・腎臓病 | アルコール依存症病棟 身体合併症病棟 |
クロザリル内服 | 精神科救急病棟 慢性期病棟 外来 |
医療関連デバイス | 身体合併症病棟 認知症病棟 |
よく聞かれる質問 抗菌薬の投与回数
看護師さんより
この、抗菌薬は1日1回なのに、
あの抗菌薬1日4回投与するのか違いがわかりません・・・・・・・
教えてほしい。
抗菌薬には、時間依存性と濃度依存性抗菌薬がある
抗菌薬の作用特性について
抗菌薬が投与されると体の中でどのような作用になるのか
- 抗菌薬が臓器から吸収される
- 血液に乗って分布
- 肝臓・腎臓で代謝
- 排泄
このように、血液中に抗菌薬が分布され排泄されるまでの時間・濃度
によって、抗菌薬作用に違いがある。
MIC:細菌の増殖を抑制するために必要な最小の薬物濃度
1 時間依存性作用
血液の中で薬のMIC濃度が長時間超えている時に効果が発現
一回で投与すると血中に長時間細菌の増殖を抑制するために
必要な薬の効果が維持しにくい場合がある。
複数回投与することで血液中MIC濃度が長くなる
ペニシリン系 セファロスポリン系 カルバペネム系 モノバクタム系
2 濃度依存性作用
高い血中濃度に達した時に効果が発現する
キノロン系 アミノグリコシド系
抗菌薬の略語を紹介
抗菌薬の採用については、施設で異なる。
1 ペニシリン系抗菌薬
PCG | ペニシリン G |
---|---|
ABPC | アンピシリン |
PIPC | ピペラシリン |
ABPC/SBT | アンピシリン スルバクタム |
PIPC/TAZ | ピペラシリン タゾバクタム |
2セフェム系
CEZ | セファゾリン |
---|---|
CMZ | セフメタゾール |
CTRX | セフトリアキソン |
CAZ | セフタジジム |
CFPM | セフェピム |
3 カルバペネム系 アミノグリコシド系
MEPM | メロペネム |
---|---|
IPM | イミペネム |
DRPM | ドリペネム |
GM | ゲンタマイシン |
AMK | アミカシン |
4 ニューキノロン系
LVFX | レボフロキサシン |
5 抗MRSA薬
VCM | バンコマイシン |
LZD | リネゾイド |
DAP | ダプトマイシン |
6 マクロライド系
EM | エリスロマイシン |
CAM | クラリスロマイシン |
AZM | アジスロマイシン |
7 テトラサイクロン系
MINO ミノサイクリン
8 ニトロミダゾール系
MIZ メトロニダゾール
抗菌薬の感受性・耐性とはなんですか?
感受性:Sensitive(S)
菌の発育を阻止でき、臨床効果が期待できる
中間:Intermediate(i)
臨床効果は(S)より低い
耐性:Resistance(R)
菌の発育を阻止できず、臨床効果が明確ではない
その他の精神科施設の問題点として
- 細菌培養検査室が無い施設が多い
- 細菌培養検査が外部委託
- 細菌培養検査結果判明まで土日を挟むと最長5日前後かかる
- 臨床検査技師さんがいない(相談できない)
培養検査を取ったら
・外部委託の場合 👉 5日ぐらいかかることが多い
・培養検査結果を必ず確認する
培養検査結果で検出された細菌は何か?
その細菌に使用している抗菌薬は、感受性があるのか必ず確認する。
まとめ
- 医師と情報共有しどの臓器の感染症なのか知ること
- どの細菌による感染症で効果ある抗菌薬を知る
- 培養検査結果から細菌・抗菌薬感受性確認し抗菌薬が適正使用を行う
精神科感染対策の第1歩
抗菌薬が投与される目的を知ること
抗菌薬使用前に培養検査をとること
当たり前のことだけど、耐性菌感染対策には大切なことです。
標準予防策・接触予防策の実施しながら抗菌薬治療も確認しましょう。
いつもより、また1歩進んだ!