こんな場面で感染対策困っていませんか?
アルコール依存症患者さんが入院してきた。
受け持ち看護師になってしまった。
どのような感染症に注意すればいいのかわからない・・・・・・・・
身体症状、臓器に与える影響や急性期 初期治療 解毒期 リハビリテーション期
治療のステージ別で感染対策に違いがあるの?
どんな場面で感染症にかかりやすの?
と悩んでいるあなた。
結論
アルコール依存症の治療ステージを理解し、患者さんの臓器や免疫力の低下、断酒会など市中感染症に遭う機会の対策を行う。
🍷🍷
アルコールにおける主な臓器異常:体に精神症状にどのような影響があるか
頭部
- 急性中毒(酔い)
- 依存症
- 振戦 せん妄
- 痴呆(大脳萎縮)
- 小脳萎縮
消化器
- 口腔・咽頭がん
- 食道がん
- 食道静脈瘤
- マロリーワイス症候群
- 脂肪肝
- 肝繊維症
- 肝硬変
- 肝臓がん
- 門脈圧亢進
- 急性・慢性膵炎
- 糖尿病
- 急性胃炎
- びらん性出血性胃炎
- 消化性潰瘍
- 消化吸収不良症候群
循環器
- 心臓肥大
- 心筋症
- 不整脈
- 電解質異常(Na K CL その他)
- 高血圧
腎臓・泌尿器
- 尿酸排出低下 抗尿酸血症 痛風
- アドレナリン分泌亢進
生殖器
男性
- 血中女性ホルモン上昇
- 男性ホルモンの低下
- 睾丸萎縮
- インポテンス
女性
- 月経不全
- 早期閉経
- 卵巣機能不全
- 妊娠異常
- 胎児アルコール症候群
末梢神経・筋肉・骨
- 抹消神経炎(両側性、知覚、痛覚、運動性障害)
- ミオパチー
- 骨粗鬆症
- 大腿骨頭壊死
血液異常 🩸
- 葉酸・ビタミン欠乏(大球性貧血)
- 鉄欠乏性貧血(出血・吸収障害)
- 血小板低下
- リンパ球機能不全(免疫機能低下)
入院時の身体合併症既往が多い
糖尿病
肝臓疾患
腎臓疾患
皮膚の感染症など
依存症の治療ステージを簡単に説明
治療ステージ | 1導入期 | 2解毒期 | 3リハビリ前期 | 4リハビリ後期 |
対処法 | 肝臓障害
精神症状 家庭内問題 警察関連 |
急性中毒
離脱症状への対処 |
精神依存症への対処
物質関連障害の治療 |
再摂取の危機への対処
家庭内問題への対処 |
目標・方法 | 病気の理解
治療への動機付け |
断酒
身体・精神症状の改善 薬物療法 輸液 |
依存の洞察
精神の安定化 集団精神療法 断酒会 抗酒薬 家族療法 |
断酒の継続
断酒会 外来治療 抗酒薬 家族療法 |
感染対策の問題 | 入院時に感染症がわからない。
B型肝炎 C型肝炎 H IVウイルス 感染症 検査の協力が得られないことがある 家族や警察の健康状態の確認 |
離脱症状時の発熱や震えについて感染症との鑑別が難しい
臓器障害がある 自傷・他害 (血液汚染に注意) |
病棟内集団療法が始まるため、COVID19などに罹患する機会が増加
院内でのプログラム時の集団感染に注意 |
病棟外集団療法が始まるため、COVID19などに罹患する機会が増加
院外から持ち込まれる市中感染症に注意する。 |
アルコール依存症と感染対策について基礎的な説明記事はこちら
病棟に感染症が入り込む問題点として
- 入院時に街中で流行している感染症が入りやすい
- 本人の感染症検査に協力が得られない場合がある
- 患者さん自信の免疫低下による感染症が発生する
- 自傷・他害時の皮膚損傷・皮膚軟部感染症に注意する
- 離脱症状と感染症の区別がつきにくい
アルコール離脱症状について
アルコール飲料を繰り返し、通常、長期に大量摂取を行なっていくと。
飲酒中断、飲酒量減量した場合に症状が出る。
アルコール離脱症候群の時間的経過
1 早期症候群(小離脱)
⏳
アルコール離脱後7時間頃より始まる。
20時間後にピーク
精神症状:イライラ感 不安 抑うつ 不快感情 幻視 幻覚
身体症状:体温変化 発汗 自律神経症状 手指 眼瞼 体幹の振戦 けいれん発作
軽い意識障害
2 後期症候群(大離脱)
⏰
離脱後72時間から96時間に多い
精神症状:大きな振戦 精神運動亢進 幻覚 意識変容 自律神経機能亢進
最初に出やすい症状
- 不穏
- 過敏
- 不眠
- 食欲低下
- 振戦 → せん妄
- 幻覚は幻視が多い
🦗 🐜 🐞 🕷
例:小動物や虫が出現することが多い、その虫が触れる感覚(幻触)を伴うこともある。
入院から3日間発熱などの症状がある
アルコール飲酒をやめて、入院後3日以内に発熱する場合
感染症の発熱、アルコール離脱時の発熱の鑑別が必要となる。
どのような対策ができるか
- 入院時にCOVID19の検査(その他感染症)
- 2日間可能であれば個室対応
- 個人防護具:フェイスシールド、N95マスク、手袋、ガウン(患者の状態により変更)
- 発熱を鑑別(感染性・非感染性)感染症検査
リハビリ期の対策
- アルコール依存症の自助グループ活動(院外の方と院内の患者さんが集まる)
- 断酒会時の感染対策(断酒会主催者の健康調査、参加後の入院患者対応
自助グループについて:同じ問題を抱えるもの同士が支え合い、問題解決を行うグループ活動
まとめ
- アルコール依存症治療のステージを理解する
- ステージ別の感染対策を準備する
- アルコール離脱時の症状と感染症症状を両方想定して対策をとる
精神科感染対策への第1歩
アルコール依存症治療の流れを知ることで、入院からリハビリ期までの感染対策に戦略が立てられる。
街中で流行している感染症にかかるリスクが高いのは、どのステージなのか。
アルコール離脱期の症状を知ることが感染対策にも活用できる。
一歩前進しよう。