新型コロナの影響で、一般病院から精神科施設に転職する方。
関連施設の中でクラスターが発生、
一般病棟から精神科病棟に応援や派遣に行く場合
精神科施設や病棟では、感染対策にどのような違いがあるのか不安になる。
事前に、どのような問題があるのか知識があれば準備ができる。
この記事を読むことで
精神科施設・病棟の感染対策の特徴を理解できる。
結論
- 手洗い・手指消毒の場面が違う(設置ができない)
- 手袋・ディスポエプロン・マスクを廊下や病室に保管ができない
- 患者さんは、症状を表出できないため感染症が広がりやすい
- 閉鎖構造を理解する(換気が困難)
- 感染対策マップを作ってみる!
手洗い・手指消毒場面の違い
1)手洗い・手指消毒場面の違い
初めて、精神科病棟に勤務する場合に注意してほしいこと
- 各病室や手洗いシンク周囲、廊下などアルコール手指消毒剤の設置がない
- ナースステーションに入る、出る際ドア・鍵に触れてしまう
- 携帯のアルコール消毒剤を持ち歩く(落とすと飲む患者さんもいるため注意)
- 携帯アルコール製剤をポケットに入れ持ち歩く
- アルコール消毒剤を、ポシェットで持ち歩く
- おむつ交換や喀痰吸引後腕に便や痰が付着しても、流水と液体石鹸がある場所までにドア・鍵に接触する。
ノロウイルスや芽胞菌(クロストリディオイディス・ディフィシル下痢症)の患者対応時
アルコール消毒薬が効きにくい。(感染症の伝播経路を遮断できない)
一般病院での手指衛生場面(WHO)
精神科病棟では、患者や職員ともに手の消毒や手洗いが実施できないため
患者や職員が触れる物品や一日何回も触れる場所は、汚染している。
精神科では、職員が⑤患者周囲環境への接触後、
ポケットに手を入れる。
ポケット内の鍵にふれる。
鍵を取り出し、ドアに鍵を入れる
ドア閉め、鍵をかける。
職員の移動や看護ケア動線上に、この一連の動作が行われる。
鍵・ポケット・手指が汚染する。
2)患者から患者への感染伝播を防ぐ方法
- 患者接触前後に必ず手の消毒を実施する
- 汚染した手で鍵を握らない(消毒後)
- 血液や便・痰などに触れた手指・腕などは、流水と液体石鹸で洗い流す
- その後、アルコール消毒剤に手指消毒を行う。
3)環境からの汚染対策として
患者さんが複数触れる場所の環境消毒を1日1回実施する。
職員の動線上に触れるドアノブのドアなど触れる場所の清掃を行う。
消毒効果の持続時間が長い消毒ディスポクロスを検討する。
私は、初めて精神科病棟に勤務した際
手の消毒や手洗いができずに戸惑いました。
手洗い物品が設置できない状況で、WHO推奨する5つの場面
を行うには、アルコール消毒剤を携帯し実施することが大切です。
携帯アルコール製剤のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
ポケットに入れる事ができる | 携帯できる量が少ない |
鍵に触れる前後の手の消毒が可能 | 白衣のポケットが汚染する |
時間・動線距離を短縮できる | 落とした場合、患者さんが誤って飲んでしまう事がある |
アルコール製剤ポシェットの活用
メリット | デメリット |
アルコール消毒剤の持ち運べる量が多い | ポシェットを患者が引っ張るケースがある |
蓋を開ける動作が不要 | プッシュボタン部分が職員の体に当たる場合 白衣に消毒剤が付着し、白衣が消毒剤で濡れてしまう |
白衣ポケットが汚染しない | ポシェット自体の表面は汚染する |
個人防護具(ディスポエプロンの下にポシェットを携帯する場合)の問題
- 汚染した手袋でディスポエプロンに触れてしまう。
- 片手でディスポエプロンを捲り上げ、携帯アルコール消毒剤・ポシェット消毒剤に触れる
- 白衣ポケット、ポケット内部の物品(鍵や拘束帯取り外し関連器具)が汚染する
感染症エリアでの手指消毒剤の工夫
このように、汚染エリアが固定されていれば、汚染専用の専用ポシェットを準備し活用することも1つの方法である。
手袋・ディスポエプロン・マスクの設置ができない
一般病院では、廊下や病室内に手袋・ディスポエプロン・マスクなどの設置があります。
精神科施設や精神科施設では、廊下や病室に個人防護具の設置がありません。
では、どこに保管されているのか?
病棟内で鍵のかかる場所に保管されています。
どのような問題があるのか
患者さんの危険性 | 職員のデメリット |
手袋やマスクなどを飲み込んでしまう | 手袋をすぐに取りに行けない |
窒息の危険性が高い | 手袋やエプロンを廃棄しにくい |
エプロンなどにより縊首の危険性がある | 連続的な個人防護具交換が困難 |
病棟内のどの場所に、手袋・ディスポエプロン・マスク等が保管されているのか確認しておきましょう。
保管場所から遠方の病室については、清潔用ビニールに個人防護具を入れ持ち運ぶことは可能です。
汚染用ビニール袋には、使用後の個人防護具を入れ廃棄する。
台車等を活用する際は、患者さんが手袋やディスポエプロンを持っていかない対策が必要となります。
患者さんの精神症状や認知症状によりますので、病棟内の患者さんの状況に応じて工夫することが大切です。
病棟で勤務する前に手袋・ディスポエプロン・マスクなどの個人防護具を廃棄できる場所を把握しましょう。
患者さんの血液体液が付着する可能性が高い場合は、個人防護具設置・廃棄物容器設置場所が近い病室を検討しましょう。
患者さんは、症状を表出できないため感染症が広がりやすい
認知機能が低下すれば、短期記憶が保てない場合もある。
症状を忘れる場合や、表現・言動をうまく伝えることができない事が多い。
症状を表出できない場合、どのような事が病棟で発生するのか
- バイタルサイン測定・問診時症状が聞き取れない(発症がいつからなど)
- 病棟内は、集団生活の場であり複数の患者さんと接触する
- 患者さんは、手洗いができない事が多い(トイレに液体石鹸・ペーパータオルがない)
- マスクを外す集団生活が多い(食事・歯磨き・入浴)
- 精神領域の集団作用業療法(集団での治療参加・カラオケ・調理・塗り絵・映画鑑賞・TV鑑賞等)
- マスク等を着用できない患者さんが大半
- 1名陽性患者が発生したら、集団発生を考えておく
患者さんの日常生活パターンがある場合
安静や病室に待機してくださいなどの指示を守れないなど、職員との意思疎通が困難な場合もある。
その他感染症が広がる事例について
- 病原体検査に激しく抵抗する患者さんも存在する
- 発熱しているのに、他の患者さんと近くに行き接触する
- 発熱や体調不良・咳などの症状があっても訴えられない
- いつから症状があったのか説明ができない
閉鎖構造を理解する(換気が困難)
閉鎖病棟ではエリアごとに、ドアがある。
職員は、鍵を携帯することになり接触感染の要因となる。
離院防止・飛び降り防止の観点から窓が10cm程度しか開かない。
窓を大きく開ける事ができない。
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十分に換気ができない場合、飛沫・空気感染のリスクが高まる。
病室の換気を行う際は、窓を開けるが廊下側は施錠している事が多い。
他の患者さんが間違って病室に入る可能性もある。
どのような換気方法があるか
- 施設(病棟)の1日に何回空気が入れ替わる設備(換気回数)になっているか確認する
- 患者さんが病室から、ホールなどに出ている際換気を行う
- 新しく病棟・病室を設置する際は、24時間換気システムを検討する
- 病室の広さや容積により、換気時間は変わるが換気扇なども活用する
- 将来的には換気機能(陰圧・陽圧)冷暖房設備を検討する
- HEPAフィルター付き濾過式空気清浄機(可動式)風量毎分5m3以上が望ましい
- 古い病棟(設備が古い)新しい病棟(換気設備あり)を使い分ける
感染対策マップを作ってみる!
病棟の図面があれば以下感染対策を実際に働く病棟マップに入れる事ができる
- 流水と液体石鹸で手をあらえる場所
- 手袋・ディスポエプロン・マスクを設置できる場所
- 手袋・ディスポエプロン・マスクを廃棄する場所
- 廃棄物が通る動線
- 患者が共有するスペース
- 患者が移動する動線
- 職員が移動する動線
以下感染対策マップ事例です。
クリック後スライドします。
まとめ
- アルコール手指消毒剤を持参し、患者の接触前後に手指消毒を実施する
- 感染症患者さんが1例発生した場合は、集団発生する事が多い
- 感染対策ができる感染対策マップを作成し、職員間で情報共有する
精神科感染対策への第1歩
一般病院から、精神科病院で初めて
働く方は、どのように感染対策を行えばよいか
とても戸惑います。
精神科の特性を学んで、感染対策を柔軟に
実施して行きましょう。