はじめに
精神科病棟で仕事をしていると、しばしば梅毒感染症の患者さんに遭遇します。
まだ、年齢は若いのに認知症症状や精神症状変化で検査をすると、まれに梅毒検査陽性の場合があります。
梅毒は聞いたことがあるけど、どのような感染症で病状進行や症状がわからない。
梅毒感染症対策や症状のポイント、検査結果の考え方などをこの記事で皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
特に梅毒は、感染経路や症状が多様で、精神科患者における特有の症状がわかりにくいこともあります。
この記事では、梅毒感染の基礎知識から、具体的な対策、さらには看護師が直面する問題の解決策までを網羅的に解説します。
結論
- 梅毒の症状・進行状況・梅毒の活動性が高いか低いか判断できる。
- 梅毒患者の精神症状・身体症状の観察ポイントを把握する。
- 梅毒患者への感染対策(標準予防策)を実施する。
梅毒とは
梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。
オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。
また、一度治っても再び感染することがあります。
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感染経路
梅毒の感染経路について
梅毒は主に性行為によって感染する性感染症です。
梅毒トレポネーマは、感染者の粘膜や皮膚の微細な傷から侵入し、新しい宿主に感染します。
また、母子感染(垂直感染)も梅毒の感染経路の一つで、妊婦が梅毒に感染している場合、胎盤を通じて胎児に感染する可能性があります。
血液を介した感染や、非常にまれですが、感染した血液製品の輸血による感染の報告もあります。
これらの感染経路を理解することは、梅毒の予防策を講じる上で非常に重要です。
オーラルセックスにおける梅毒感染
オーラルセックスは、感染したパートナーの性器、肛門、または口腔から梅毒トレポネーマが体内に入ることで感染するリスクがあります。
口腔内に梅毒の一次病変や二次病変が現れることがあり、これらはしばしば見逃されがちです。
オーラルセックスを行う際は、特に口内に傷がある場合は感染のリスクが高まるため、コンドームの使用を検討してください。
アナルセックスにおける梅毒感染
アナルセックスは、特に保護措置を講じない場合、梅毒を含む多くの性感染症のリスクが高まります。
感染者の性器や肛門から直接、粘膜や微細な傷口を通じて感染する可能性があります。
アナルセックスを安全に行うためには、適切なサイズのコンドームの使用が重要です。また、潤滑剤の使用により、傷の発生リスクを減らすことができます。
ヴァギナルセックスにおける梅毒感染
ヴァギナルセックスは、梅毒の最も一般的な感染経路の一つです。
感染したパートナーの性器から直接、粘膜や微細な傷口を通じて感染するリスクがあります。
コンドームの適切な使用は、感染リスクを大幅に減少させることができます。また、定期的な性病検査を受けることで、自身やパートナーを守ることができます。
注意点
- パートナーとのコミュニケーション: 性行為においては、パートナーとオープンなコミュニケーションを持ち、互いの性的健康について話し合うことが重要です。
- 定期的な検査: 定期的な性病検査により、梅毒を含む性感染症の早期発見と治療が可能となります。
- 保護措置の利用: コンドームやデンタルダムの適切な使用は、梅毒を含む性感染症から保護する有効な方法です。
性行為における梅毒感染のリスクを理解し、適切な予防策を講じることで、自身とパートナーの健康を守ることができます。
日本での梅毒発生状況
上記グラフは、厚生労働省梅毒発生状況から掲載しています。
2022年は、非常に多くの方が梅毒に感染しています。
年齢別では、
男性は、20代・30代・40代が多く
女性は、20から29歳の年代が多い
梅毒の進行過程
梅毒(syphilis: Treponema pallidum)
・感染後、全身の臓器に菌が播種される
・感染が成立した人の一部が感染初期に第1期・第2期梅毒の形で発症し、その後潜伏感染の形をとる。
・第1期が陰部潰瘍、第2期が皮疹だが症状は多岐にわたる
梅毒の期間 | 主な症状と特徴 | 治療の有無 |
---|---|---|
第1期梅毒 | 無痛性の潰瘍(シャンクル)。感染部位に現れ、自然に消失するが、治療が必要。 | 必要 |
第2期梅毒 | 全身症状(発熱、倦怠感等)。手のひらや足の裏に皮疹。無治療の場合、症状は消退するが潜伏期に進む。 | 必要 |
潜伏期梅毒 | 無症状。早期潜伏は感染後1年以内で再発可能性あり。後期潜伏はそれ以降で感染性は低下。 | 検討 |
第3期梅毒 | ゴム腫、神経梅毒、心血管梅毒など。深刻な健康被害を引き起こす。 | 必要 |
第4期梅毒 | 中枢神経系に影響。認知症、運動障害、感覚異常など神経系統の症状。 | 必要 |
臨床像
- 潜伏期間
・感染後、多くは2~6週間程度(10から90日)の期間
・局所からスピロヘータの侵入と全身播種の時期
・この時期の全身播種に伴う全身症状がない
第1期 梅毒
・感染後、平均3週間
・無痛性の潰瘍:下疳(スピロヘータの侵入部局所の病変で半月から1.5月続く)
・痛みを伴わない(少ない)
・治療なしでも病変が消失する
第2期 梅毒
・全身症状:発熱・倦怠感、食欲不振
・咽頭炎、咽頭痛
・全身性、リンパ節腫脹
・皮疹:班、班丘疹、丘疹、膿疹、
・扁平コンジローマ
・皮疹:手のひら、足底、口腔、陰部
・粘膜疹:粘膜班、びらん、潰瘍、下疳の存在
・中枢神経:頭痛、髄膜炎、脳神経障害、二重視、視神経障害、聴神経障害、めまい
・振動感覚障害
・腎臓:糸球体腎炎、ネフローゼ症候群
・消化器:肝炎、腸管壁侵入、腹膜炎
・骨・筋肉:骨膜炎、関節炎、筋肉痛
・目:充血・目の痛み
潜伏梅毒
・無症状
・感染後1年以内を早期潜伏、以降を後期潜伏と考える
・早期潜伏は、感染性があり、後期潜伏はない。
・早期潜伏梅毒の25%が第2期梅毒を再発する。
第3期 梅毒
・神経梅毒・心血管梅毒・ゴム腫
・無治療の場合30%がこの時期に至る。各臓器に緩除な炎症を認める
・神経梅毒:慢性髄膜炎(進行麻痺)
初期症状としては,頭痛,項部硬直,めまい,異常行動,集中力低下,記憶障害,倦怠感,不眠症,霧視などがある。
・人格変化
・情緒
・反射
・瞳孔・虹彩炎・ブドウ膜炎
・感覚異常(妄想)
・知性以上(記憶障害)
・緩慢な話し方
・髄膜血管梅毒
・脳実質障害
・精髄実質障害
・髄膜→脳実質→脊髄
・心血管梅毒:大動脈弁の障害(閉鎖不全)
- 進行麻痺
梅毒トレポネーマによる感染症のうち5%程度は10年から20年を経て中枢性の感染症を発症する。
好発年齢:40~50歳代
初老期認知症
行動症状が進行性に悪化し,ときに何らかの精神障害や認知症に類似する。
易刺激性,集中困難,記憶力低下,判断力低下,頭痛,不眠症,疲労,および嗜眠がよくみられる。
痙攣発作,失語,および一過性の不全片麻痺が起こることもある。
衛生状態や身だしなみに無頓着になる。
患者は情緒不安定となり,抑うつ状態になり,病識の欠如を伴う誇大妄想がみられることがある。
第4期 梅毒
第4期梅毒:進行麻痺ないし麻痺性神経梅毒と脊髄癆の2つに大別
初期症状は、アルツハイマー型認知症と誤診することもあるため、注意が必要である。
精神症状
・人格変化
・抑制欠如
・易怒的
・躁鬱
・妄想状態
- 認知症型
- 誇大型
- うつ病型
- 統合失調型
- 特殊型に分類
梅毒による具体的な症状と観察ポイント1
部位 | 症状の具体例 | 観察ポイント | 観察方法 |
---|---|---|---|
目 | ・視力の低下・眼痛 ・光に対する過敏性 | 患者が視力の低下や眼痛、異常な光感度を報告した場合、梅毒感染の可能性を考慮します。 | 眼科医による詳細な眼底検査、視力検査 |
耳 | ・聴力の低下 ・耳鳴り | 患者が聴力の変化や耳鳴りを経験している場合、これらは神経梅毒の可能性がある症状です。 | 聴力検査、耳科医による詳細な耳の検査 |
口腔内 | ・口内炎 ・無痛性潰瘍 | 口腔内に無痛性潰瘍や炎症が見られる場合、これらは梅毒の一次病変や二次病変の可能性があります。 | 口腔内の検査、必要に応じて生検 |
陰部の皮膚 | ・発疹 ・無痛性潰瘍 | 陰部に発疹や無痛性潰瘍が現れることは、梅毒の初期症状である可能性が高いです。 | 皮膚科医による検査、陰部の検査 |
皮膚 | ・銅色の皮疹 ・掌蹠膿疱症 | 全身の皮膚、特に手のひらや足の裏に銅色の皮疹が現れることは、梅毒の典型的な症状です。 | 皮膚の視覚的検査、必要に応じて皮膚生検 |
注意点
- 目の症状:梅毒による眼の症状は、視力低下や失明に至ることもあるため、症状が見られたら迅速に眼科の専門医の診断を受けることが重要です。
- 耳の症状:聴力損失や耳鳴りが永続する場合、梅毒以外の原因も含め、詳細な検査を行う必要があります。
- 口腔内の症状:口腔内の無痛性潰瘍は他の疾患と間違えやすいため、梅毒の疑いがある場合は専門医の診断が必要です。
- 陰部の皮膚症状:陰部の潰瘍や発疹は性感染症の一般的な兆候であるため、性病専門クリニックや皮膚科での診断が推奨されます。
- 皮膚の皮疹:梅毒による皮疹は特有の外見をしていることが多いですが、正確な診断のためには専門医による検査が必要です。
梅毒感染が疑われる場合、これらの症状が現れたら、速やかに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
梅毒による具体的な症状と観察ポイント2
分類 | 症状 | 観察ポイント | 観察方法・スケール |
---|---|---|---|
精神症状 | 認知障害 | 記憶力、注意力、判断力の低下 | MMSE(Mini-Mental State Examination)でのスクリーニング |
精神錯乱 | 思考の混乱、非現実的な思い込み | 環境への適応能力や対人関係の観察 | |
抑うつ | 気分の低下、無力感、興味喪失 | PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)を用いた自己評価 | |
不安感 | 焦燥感、恐怖、不安定な気持ち | GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)スケールによる自己評価 | |
身体症状 | 歩行異常 | 不安定な歩行、足の運びの困難 | 歩行パターンの直接観察、バランステスト |
血管の病気 | 脈拍の異常、血圧の変動 | 脈拍と血圧の定期的測定、心電図(ECG)検査 | |
バイタルサインの異常 | 体温、脈拍、呼吸数、血圧の変動 | バイタルサインの定期的測定と記録 | |
意識レベルの異常 | 昏睡、意識の混濁、反応の遅れ | GCS(Glasgow Coma Scale)による意識レベルの評価 |
注意点
- 認知障害:MMSEは広く使用されている認知機能評価ツールであり、30点満点でスコアリングします。24点未満で認知障害の疑いがあります。
- 抑うつ症状:PHQ-9は抑うつの重症度を評価するための自己評価式アンケートです。点数が高いほど抑うつの重症度が高いことを示します。
- 不安症状:GAD-7は不安症状の自己評価スケールで、点数が高いほど不安の度合いが高いことを示します。
- 歩行異常:歩行の観察には、患者が歩行する様子を直接観察することが重要です。特に、歩行時のバランスや足を引きずる動作に注意してください。
- 血管の病気とバイタルサイン:血管疾患やバイタルサインの異常は、梅毒が心血管系に影響を及ぼしている可能性があります。定期的な血圧測定や心電図検査により、これらの症状を早期に捉えることができます。
- 意識レベル:GCSは意識レベルを評価するためのスケールで、目を開ける反応、言葉による反応、運動反応の3つのカテゴリーでスコアリングします。
梅毒の検査方法
検査方法と特徴
検査タイプ | 検査名 | 説明 | 特徴 |
---|---|---|---|
非トレポネーマ検査 | RPR (Rapid Plasma Reagin) | 梅毒による体内の抗体反応を検出します。 | 感染の活動性を示す指標となりますが、他の条件でも陽性になることがあります。治療効果のモニタリングに使用されます。 |
トレポネーマ検査 | TPHA (Treponema pallidum Hemagglutination Assay) | 梅毒トレポネーマに対する特異的な抗体を検出します。 | 梅毒感染の有無を特異的に判断できますが、一度陽性になると治癒後も陰性に戻らないことが多いです。 |
検査の流れ
梅毒の検査は、通常、非トレポネーマ検査であるRPRから始めます。
RPR検査で陽性の結果が出た場合、その後にトレポネーマ検査のTPHAを行い、梅毒の感染を確定します。
治療の効果を確認する際にも、RPR検査が用いられることがあります。検査は血液サンプルを用いて行われ、結果は数日から1週間程度で出ます。
注意点
- 梅毒検査は匿名で受けることが可能です。
- 地域の保健所や一部のクリニックでは無料で検査を受けられる場合があります。
- 梅毒の初期症状は非常に軽微で見過ごされがちですが、感染していると他人に感染させるリスクがあります。性行為の相手が変わった時や、不安がある場合は検査を受けることをお勧めします。
- 梅毒は適切な治療を行うことで完治する病気です。検査で陽性が確認された場合は、すぐに治療を始めましょう。
梅毒の検査と診断は、梅毒感染の早期発見と治療に不可欠です。
性行為によるリスクがある場合は、定期的な検査を受けることを心がけてください。
STDチェッカーについて
性感染症(STD)のリスクは、性行為がある限り常に存在します。
しかし、STDチェッカーを使えば、誰にも知られず、自宅で簡単に検査が可能です。
検査結果は早ければその日のうちにオンラインで確認でき、もし感染していた場合も、迅速に治療を開始できます。
なぜSTDチェッカーなのか?
- プライバシー保護:匿名で検査を受けることができ、検査結果もプライベートに保たれます。
- 簡単操作:専門的な知識は不要。わかりやすい説明書が同梱されており、簡単に自己採取できます。
- 迅速な結果:オンラインで検査結果を確認でき、感染が確認された場合はすぐに治療を開始できます。
- 高精度:最新の技術を使用し、高い精度で検査を行います。
感染対策としてのSTDチェッカーの役割
STDチェッカーは、感染の早期発見に役立ちます。
検査を定期的に行うことで、感染を未然に防ぐだけでなく、早期に治療を開始することができます。
これは、自分自身だけでなく、パートナーの健康を守ることにもつながります。
メリット・デメリットについて
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
プライバシー | 自宅で検査が可能で、誰にも知られずに検査を受けられる。 | 検査結果について専門家と直接相談する機会が少なく、不安を感じる可能性がある。 |
便利さ | 検査キットが自宅に届き、郵送で結果を受け取れるため外出の必要がない。 | 検体採取の正確性が個人の技術に依存し、不適切な採取による誤った結果のリスクがある。 |
スピード | 検査結果が早く得られ、感染が疑われる場合には迅速に対応できる。 | 緊急を要する医療対応が必要な場合には、直接医療機関にアクセスする時間の遅延が発生する可能性がある。 |
精度 | 最新の技術を使用した高精度の検査を自宅で行える。 | 検査キットによっては、医療機関で行う検査に比べて感度や特異度が低い場合がある。 |
コスト | 医療機関を訪れる必要がなく、交通費や診察料が節約できる。 | 検査キットの購入には費用がかかり、保険適用外である場合が多い。 |
STDチェッカーは、プライバシーの保護、利便性、迅速な結果提供の面で大きなメリットを提供しますが、デメリットも認識しておくことが重要です。特に検体採取の正確性や検査結果の解釈に不安がある場合は、専門医に相談することをお勧めします。
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性病検査 STDチェッカー検査項目:5項目尿クラミジア、淋菌血液HIV(エイズ)、梅毒、B型肝炎
梅毒の感染対策について
標準予防策を実施する。
標準予防策とは、すべての患者さんの血液・体液・精液・滲出液等について感染対策を行う。
血液・体液・精液・滲出液(汗を除く)に接触する場合
手指:手袋着用
衣類:ディスポエプロン着用
目や口に接触する場合:マスク着用・フェシスシールド着用
手指の消毒:患者毎に必ず実施する。
患者さんへの梅毒感染対策教育について
梅毒の感染を防ぐための最も効果的な方法は、安全な性行為を実践することです。
コンドームの使用は、梅毒を含む多くの性感染症のリスクを軽減しますが、感染部位や病変がコンドームで覆われない場合は感染の可能性があります。
したがって、定期的な性病検査を受け、性行為のパートナーとのオープンなコミュニケーションを保つことも重要です。
妊娠を計画している女性は、妊娠前に梅毒のスクリーニングを受けることが望ましく、妊娠中の女性は定期的な健診で梅毒の検査を受けるべきです。
これらの対策により、梅毒の感染とその拡散を効果的に防ぐことができます。
梅毒トレポネーマの消毒
消毒薬に対する抵抗性は弱い。
低水準消毒薬で対応する。
0.1~0.5w/v%両性界面活性剤,0.1~0.5w/v%第四級アンモニウム塩を使用する。
熱を使用する場合では,トレポネーマ属は42℃以上で速やかに死滅する。
4℃では3日間で感染力を消失する。
環境の消毒が必要な場合は,0.1~0.5w/v%両性界面活性剤,0.1~0.5w/v%第四級アンモニウム塩を使用する。
リネン類は熱水消毒(80℃・10 分間),
もしくは0.05w/v%(500ppm)次亜塩素酸ナトリウム溶液に30 分間以上浸漬して消毒する。
感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について
以下 厚生労働省サイトより抜粋
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-11.html
ア | 患者(確定例) 医師は、(2)の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見から梅毒が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、梅毒患者と診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。 この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。 |
イ | 無症状病原体保有者 医師は、診察した者が(2)の臨床的特徴を呈していないが、次の表の左下欄に掲げる検査方法により、抗体(1)カルジオリピンを抗原とする検査では16倍以上又はそれに相当する抗体価)を保有する者で無症状病原体保有者と見なされる者(陳旧性梅毒と見なされる者を除く。)を診断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。 この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。 |
ウ | 感染症死亡者の死体 医師は、(2)の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、梅毒が疑われ、かつ、次の表の左欄に掲げる検査方法により、梅毒により死亡したと判断した場合には、法第12条第1項の規定による届出を7日以内に行わなければならない。 この場合において、検査材料は、同欄に掲げる検査方法の区分ごとに、それぞれ同表の右欄に定めるもののいずれかを用いること。 |
検査方法 | 検査材料 |
染色法またはPCR検査等による病原体の検出 | 病変(初期硬結、硬性下疳、扁平コンジローマ、粘膜疹) |
・次の1)、2)の両方の抗体検査による血清抗体の検出1)カルジオリピンを抗原とする検査例)RPRカードテスト、凝集法、自動化法 等2)T. pallidumを抗原とする検査例)TPLA法、TPPA法、CLIA法、FTA-ABS法 等 | 血清 |
先天梅毒は、下記の5つのうち、いずれかの要件をみたすものである。
ア 母体の血清抗体価に比して、児の血清抗体価が著しく高い場合イ 児の血清抗体価が移行抗体の推移から予想される値を高く超えて持続する場合ウ 児のT.pallidumを抗原とするIgM抗体陽性エ 早期先天梅毒の症状を呈する場合オ 晩期先天梅毒の症状を呈する場合 |
梅毒患者さんの針刺し事例対策
梅毒患者からの針刺し事故は、医療従事者が働く上で避けて通れないリスクの一つです。
このような事故が発生した場合の迅速かつ適切な対応は、
事故後の感染リスクを最小限に抑えるために非常に重要です。
以下は、梅毒患者の針刺し事故を起こした場合の対応に関する記事です。
梅毒患者の針刺し事故発生時の対応手順
- 直ちに処置を行う
- 事故直後、針刺し部位を水または生理食塩水で洗い流します。石鹸を使用しても良いですが、傷口を強く擦ったり、押し出すような行為は避けてください。
- 次に、アルコールベースの消毒液やヨードポビドンで消毒します。
- 医療機関での評価を受ける
- 事故発生後すぐに、職場の衛生部門や病院の感染症部門に報告し、指示に従ってください。
- 医師による評価を受け、必要に応じて梅毒を含む血液感染症の検査を行います。(施設の手順に沿って実施してください)
- フォローアップ
- 医師の指示に従い、定期的にフォローアップ検査を行います。梅毒の潜伏期間を考慮し、初期検査後に数週間~数ヶ月後に再検査を行うことが推奨されます。
- 予防接種と治療
- 梅毒への特定の予防接種は存在しませんが、事故発生時には、他の血液感染症(例:B型肝炎)に対する予防接種の有無を確認し、必要に応じて接種を受けます。
- 梅毒感染が確認された場合は、適切な抗生物質による治療が行われます。
- 記録と報告
- 事故の詳細を記録し、必要に応じて職場の安全衛生部門に報告します。これにより、将来的な事故の予防策の改善に役立てられます。
- 心理的サポート
- 針刺し事故は、感染のリスクだけでなく、精神的なストレスも伴います。必要に応じて心理的サポートを受けることを検討してください。
注意点
- 事故発生時は冷静に対応し、速やかに所定の手順に従ってください。
- 梅毒は適切な治療を受ければ治癒可能な疾患です。
- 万が一感染が確認されても、早期に治療を開始すれば健康への影響を最小限に抑えることができます。
- 針刺し事故のリスクを減らすために、常に安全な針の取り扱いプロトコルを遵守し、使用済みの針は適切に処理してください。
まとめ
梅毒は性感染症の中でも特に注意が必要な病気ですが、適切な知識と予防策によって感染のリスクを大幅に減らすことができます。
精神科病棟に勤務する医療従事者は、梅毒の感染経路とその予防対策に特に注意を払う必要があります。
手袋やマスクの着用、適切な手洗いの実施など、標準予防策の徹底が感染予防の鍵となります。
また、梅毒感染の早期発見と治療開始が重要であり、定期的な検査と早期対応が推奨されます。
梅毒感染対策は、患者だけでなく医療従事者自身の健康を守るためにも、不可欠な取り組みです。
こんにちは、Springです。
精神疾患の中には、感染症が原因で精神科に受診や入院されるケースがあります。
梅毒は、結核同様に様々な臓器に影響が出る感染症です。
一方で発見が遅れると脳や脊髄に影響が出てしまい、認知症症状や精神疾患に似た症状が現れます。
梅毒は、予防すること、治療することができる感染症です。
症状がある場合は、早めに受診し検査を行いましょう。