はじめに
精神科病院におけるノロウイルス感染対策は、特殊な課題を抱えています。
ノロウイルスはアルコール消毒剤に抵抗性を持ち、感染経路が広範囲に及ぶため、対策は一層複雑です。
精神状態が不安定な患者は衛生管理が困難であり、感染拡大のリスクが高まります。
本記事では、ノロウイルスの基本情報と精神科病院における感染対策の具体的な方法を紹介します。
結論
- 感染経路の理解と対策の徹底: ノロウイルスは飛沫・空気感染や接触感染(糞口感染)で広がるため、患者と職員の両方に対して手洗いの徹底、環境消毒の実施が不可欠です。
- 特別な配慮の必要性: 精神科患者は自己管理が難しい場合が多く、特別な配慮と個別の対応が必要です。具体的には、個人衛生のサポートや、感染した場合の隔離措置の適用などが挙げられます。
- 手指消毒剤の選定:ノンエンペローブウイルスにも、効果のあるアルコール手指消毒剤を検討する。手指消毒剤の使用回数を増やす。流水と石鹸で手洗いができる場所では、手指消毒後に手洗いを組み込みましょう。
- ノロウイルスのアルコール消毒剤への抵抗性を考慮し、病棟や高頻度に触れる場所・鍵などの物品は次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤の使用が推奨されます。
ノロウイルスについて
- ノロウイルスの感染経路と特徴: ノロウイルスは主に飛沫・空気感染や接触感染(糞口感染)で広がります。感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが、他の人の口に入ることで感染が広がります。
- 感染の潜伏期間と感染性期間: ノロウイルスの潜伏期間は通常1〜2日で、感染性は発症前から発症後数日間持続します。回復後もウイルスは体内に残り、感染力を持続することがあります。
- 具体的な感染対策: 患者と職員に対して定期的な手洗いを促し、食事前後やトイレ使用後の手洗いを徹底します。また、病室や共有スペースの清掃と消毒を頻繁に行います。
- 精神科患者の特性と対策: 精神科患者は自己衛生管理が難しい場合があります。職員は患者の手洗いを支援し、必要に応じて個別のケアプランを立てます。
- 消毒剤の使い分け: アルコール消毒剤はノロウイルスに効果が限定的なため、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤の使用が推奨されます。特に高頻度接触部位の消毒には注意が必要です。
精神科病院におけるノロウイルス感染対策の難しさ
- 病棟内に病状の悪化で手指消毒剤や液体石鹸、ペーパータオルなどを異食(誤って食べる飲む行為)がある患者さんが入院している場合、上記感染対策物品が設置できない。
- 食堂・ホール・トイレなどの共有スペースでの嘔吐・下痢が発生しやすい。
- 閉鎖病棟が多い場合は、職員が鍵を持参し接触する。(手が洗えない状況で鍵やドアに接触しなければならない環境が多く存在する)
- 異食がある患者さんが入院している場合は、共有トイレや個室トイレで、ノロウイルス患者さんが排便後に流水と液体せっけんで手を洗うことが困難なこともある。
- ノロウイルス陽性患者さんがポータブルトイレを使用する場合、ポータブルトイレを洗浄する場合、汚物処理室までの動線上で鍵をあけ、ドアを開けることが必要となる。
- おむつ交換や陰部洗浄など複数の患者さんのケアを夜勤や休日は少数の職員で対応するため、おむつ交換カートなどが汚染しやすい。
- 拘束帯の便汚染や車椅子の安全ベルトなど、特殊リネンが吐物や便で汚染しやすい。
- 拘束帯を取り外す器具も予備が少ないため、共有することが多い。
- 鍵を落とさないための、リング上のストラップ・ポケットなども汚染しやすい。
感染対策の工夫
- 具体的な感染対策: 患者と職員に対しては、定期的な手洗いを徹底し、特に食事前後やトイレ使用後、嘔吐物や便の処理後は手洗いを強化します。(患者の手洗いや手指消毒を職員がカバーリングする)病室や共有スペースの清掃と消毒を頻繁に行い、特にドアノブや手すり、トイレなどの多くの患者・職員が触れる部分の清掃に重点を置きます。また、患者間の接触を最小限に抑えるための工夫も必要です。
- 精神科患者の特性と対策: 精神科患者は、自己の衛生管理が難しい場合があります。これに対処するため、職員は患者の手洗いを支援し、個別のケアプランを立てる必要があります。患者が自発的に衛生管理を行えるように支援するとともに、感染リスクが高い患者には特別な注意を払い、必要に応じて個室の提供や隔離措置を取ることも重要です。
- 消毒剤の使い分け: ノロウイルスはアルコール消毒剤に対して抵抗性があるため、消毒には次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤の使用が推奨されます。病室や共有エリア、特に多くの人が触れる物の消毒には、適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用し、指定された時間、消毒剤を表面に留めておくことが重要です。特にトイレや洗面所、手すり、ドアノブなどの頻繁に触れられる箇所は、日常的に消毒を行います。消毒作業時には、職員は適切な保護具を着用し、使用後は手袋などの使い捨て品を適切に廃棄するこが不可欠です。
ポータブルトイレの感染対策
汚物処理室でのポータブルトイレ洗浄時の環境汚染対策
ポータブルトイレが洗える場所は、限られている(1・2箇所のことが多い)
汚物処理室までの動線距離・時間・水洗による環境曝露を低減する方法の1つとして
ポータブルトイレの中容器にビニール袋で覆い、おむつを入れとび散らないようにします、患者が嘔吐・排便後にビニール袋を結び、感染性廃棄物に廃棄する。
次亜塩素酸酸ナトリウム0.1%溶液を付着したディスポシートなどでポータブルトイレの接触面を清拭消毒する。
ポータブルトイレへのビニール袋やオムツなどの異食がある患者さんには、使用しないでください。
おむつ交換カートの感染対策
おむつ交換カートがノロウイルスで汚染された場合、間接的な接触感染伝播経路になる。
おむつ交換カートを使用しない対策を検討する。
ビニール袋を活用して、個人やエリア単位でビニール袋で清潔物品と汚染したオムツ入れビニールをセット化し準備する。
1患者毎に、手袋・ディスポエプロン交換し手指消毒剤を実施する。
手洗いができる場所が複数あれば、流水と液体石鹸での手洗いを組み込ませる。
オムツ交換カートを使用する場合は、以下順番で交換していきましょう。
- ノロウイルスが否定できる患者
- ノロウイルス陽性患者に接触した患者
- 検査ができず、消化器症状がある患者
- ノロウイルス陽性患者
①から④のグループでカートを区分けしましょう。(カートが複数あれば)
吐物や下痢便の対策について
患者さんの大半は、症状を表出する前に嘔吐や下痢便を発症すること多い。
嘔吐処理に対応する個人防護具、消毒薬、ビニール袋をセット化しておく。
物品を集める時間・距離、消毒薬を作成する時間を短縮し、嘔吐や下痢で環境が汚染された場所の対応が迅速にできるように市販の吐物処理セットなども検討する。
嘔吐物の飛び散る範囲について、広い部屋などは吐物の粘性や量に応じて飛散している範囲は異なる。
トイレなど狭い場所では、床やトイレだけでなく側面や壁なども次亜塩素酸ナトリウム0.1溶液の清掃消毒を行う。
精神科病院では、畳の部屋や外傷・転倒転落防止のため床が柔らかい素材の場合がある。
このような素材の環境への感染対策教育とシュミレーショントレーニングが必要です。
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感染対策期間について
下痢、嘔吐症状消失後ノロウイルスの潜伏期間の2倍(4日)が一つの目安で考える。
7日以降もウイルスを排出していることもある。
精神科の患者さんの多くは、排便コントロールが困難なため緩下剤を服用している方も存在するため、便性状が下痢に近い。
入院患者さんの通常の便性状・回数・バイタルサインを、ものさしとして感染対策期間を取り決める。
まとめ
ノロウイルス感染対策は、精神科病院において特別な配慮と綿密な計画が必要です。
感染経路の理解、患者の特性に合わせた個別の対策、そして適切な消毒剤の使用が重要です。
患者の安全と職員の健康を保つためには、感染症対策を日常的に徹底し、最新の情報に基づいた適切な行動が求められます。