こんな場面で困っていませんか?
精神科慢性期病棟に配属になってしまった。
受け持ち患者さんは、60歳 男性
入院患者さんの入院年数は20年近い
精神科疾患名は、統合失調症だけど糖尿病や高血圧の合併症も多いな
この患者さんは、将来どのような感染症になりやすいのだろうか。
集団での食事、洗面、入浴、治療(集団療法)を複数の患者・職員と共有するし、
口の中や皮膚の清潔も保てていない、心配だな・・・
どのような問題があるのか
- 長期の抗精神病薬内服による副作用
- 薬の副作用や加齢による誤嚥の増加
- 虫歯が多い
- 喫煙(タバコ)を長期間吸っていた
- 集団生活
- 長期入院で発生しやすい感染症
- 薬剤耐性菌問題
何を学ぶことができるのか
慢性期病棟に入院している患者さんの、統計を知ることができる。
抗精神病薬の作用・副作用のポイントを学ぶ
加齢による身体機能の低下
読者のメリット
慢性期病棟に入院している患者さんの感染対策に活用できる。
結論
- 抗精神病薬副作用と老化が重なる感染症を知る
- 慢性期病棟における流行性ウイルス疾患感染対策
- 慢性期病棟入院患者の薬剤耐性菌対策
以下記事に、厚生労働省精神科施設の外来・入院統計を掲載しています。
精神科入院患者の統計データ
抗精神病薬の副作用について
1-1 向精神薬と抗精神病薬について
1)向精神薬:中枢神経に作用する薬物の総称
2)抗精神病薬(統合失調症等)に対する薬
・抗精神病薬の作用機序
神経伝達物質(ドパミン、セロトニン)が適切な量になるよう調節
3)抗精神病薬の効果・副作用
- 中脳辺縁系では、ドパミンの量を減らすことで陽性症状は改善するが・・・
- 中脳皮質系、黒質線条体系、漏斗下垂体系でもドパミンが減る
- そのため副作用が出る。
4)副作用について
- 陰性症状、認知機能障害に関連
- 錐体外路症状に関連
- 手足の震え、動作が鈍くなる、舌がでたままになる、足がむずむずする
- じっとしていられない、運動障害
- 乳汁分泌、月経障害、性機能障害等
5)錐体外路症状について
錐体外路:随意運動を司る錐体外路を不随意に調整し、
運動が目的に合うよう支える神経回路。
黒質線上体路での、ドパミンD2受容体を遮断することで生じる。
6)パーキンソンニズム
症状:筋固縮、動作緩慢、小刻み歩行、前傾姿勢、振戦、よだれ(流涎)
・仮面用顔貌 動作緩慢
7)アカシジア
症状:下肢のむずむず感 そわそわ感、運動亢進症状(足踏み、ウロウロ歩き)
8)ジストニア
症状:自己制御できない持続的な筋肉の収縮や痙攣
喉頭ジストニア、痙性斜頸、痙性後屈、開口状態
舌(突出・捻転)眼球上転
9)ジスキネジア
症状:頸部、顔面、口周囲の多様な不随運動
10)悪性症候群
- 発症前7日以内の抗精神病薬の使用既往
- 高熱:38°以上
- 筋強剛
- 意識障害・頻脈・頻呼吸、発汗、流涎、振戦、尿失禁
- CPK上昇 白血球増加 代謝性アシドーシス
11)横紋筋融解症
横紋筋の細胞膜が変性融解し、筋組織から逸脱したミオグロビンやカリウムなど
細胞成分が血中に放出することで症状が出る。
症状:筋肉の強張り、痛み、赤褐色尿
血中CPK・AST・LDHなどの逸脱酵素上昇、ミオグロブリン尿
12)その他
- 眠気、めまい ふらつき 血圧低下
- 悪心 嘔吐 食欲不振 便秘 イレウス
- 口渇 排尿困難 認知機能低下
- 糖尿病 体重増加
- けいれん
- 高プロラクチン血症
- 肺塞栓 深部静脈血栓
- 再生不良貧血 溶血性貧血 顆粒球減少
- 肝機能障害
- 不整脈 心筋炎
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
老化 フレイルについて
1-1 生理的老化、機能が低下して見つかることが多い
頻尿 骨粗鬆症 脊椎圧迫骨折
1-2 恒常性機能低下 電解質異常を起こしやすい
腎機能低下 浮腫、脱水をきたしやすい
1-3 ホメオスタシスの低下
筋肉細胞数 体内水分量の減少
ホルモンの異常
1-4 加齢による生体防御機能の低下
①皮膚粘膜の防御低下
アルブミンが低下すると皮膚粘膜の脆弱性が増加する
気管支腺毛の動き低下 誤嚥増加
残尿の増加 👉 細菌が長期に滞留する 👉 尿路感染を起こしやすい
②リンパ球機能低下
ウイルス感染に対する脆弱性
③低栄養
リンパ球の抗体産生低下
好中球やマクロファージの機能低下 👉 細菌の貪食低下 👉 細菌性感染増加
現時点から10年後患者さんは、どのような病気になりやすいのか?
- 統合失調症で精神症状が悪化すると
- 抗精神病薬投与
- 抗コリン・抗ヒスタミン作用
- 口渇・活動性低下
- カロリーの過剰蓄積・消化管の運動低下
- 肥満・便秘が継続すると
- 高血糖・高血圧・高脂血症になる
- 糖尿病になると
- 細部血管の疾患となる
- 糖尿病性腎症 糖尿病性網膜症 糖尿病性神経障害
- 大血管の疾患
- 心筋梗塞 肺塞栓 下肢先端壊死による下肢切断
- 基礎疾患(心疾患 腎臓疾患 肺疾患 皮膚疾患)
- 感染症に罹患すると重症化する
- 重症化すると死亡するリスクが高まる
副作用・老化・免疫低下・基礎疾患が重複すると
流行性ウイルス(COVID19・インフルエンザ・RS等)
薬剤耐性菌による肺炎・尿路感染・血流感染・手術部位感染
が発症した場合、重症化する。
まとめ
- 糖尿病のコントロール
- ワクチン接種
- 口腔ケアや手洗いの患者教育
精神科感染対策の第1歩
短期的な問題には、フォーカスできるものです。
受け持ち患者さんが今後どのような病気を発症しやすいのか
考えるようになれば、看護の質は向上します。
ミスターチルドレンの「彩り」の歌詞みたいに、
なんでもない作業がいつか繋がっていきます。
Covid19感染対策で頑張っている皆さん。
アウトブレイクに対応している皆さん。
本当にありがとうございます。