こんな場面で困っていませんか?
突然患者から手を掴まれ、爪を立てられ職員の右腕の皮膚から出血してしまたった。
患者は、B型肝炎ウイルス陽性患者、職員は、B型肝炎ウイルスワクチン接種したばかりの新人看護師。
新人看護師から、感染委員の貴方へ相談がありました。
どうすれば、いいのだろう今後新人へどのようにアドバイスをすればいいのだろう。
精神科施設での職業感染の場面、その対策を学ぶことができる
- 血液・体液媒介病原微生物によるもの
- 結核
- 流行性ウイルス感染症(麻疹・風疹・ムンプス・水痘・COVID19)
職業感染とは・・
簡単に述べると職員が就業中に感染症になってしまう事
血液・体液にて感染する微生物
血液・体液にて感染する微生物
HBV HCV HIV
咬傷(患者👉職員・患者👉患者)
噛んだ側と噛まれた側の対策が必要です。
- 針刺し事例
- 目の粘膜への血液・体液混入
- 患者が自傷行為後出血で興奮している状態
- 作業療法時物品が血液汚染した場合
- COVID19感染発症患者対応時
精神科では、一般病院と比べて単純に輸液や注射の総対数が少ない
つまり、事例を経験・共有する機会が単純に少ない。
一方で、精神科施設の特性、咬傷や患者からの直接接触など一般病院が知らない事例を経験することが多い。
詳しく知りたい人は以下、職業感染研究所サイトを閲覧してください。
一般病院、手術室などでの針刺事例(いつ・どこで・誰が・どんな場面で)
詳しい、内容が記載されています。
血液・体液(便・尿・唾液・膣分泌液)で問題となる微生物
HBV:B型肝炎ウイルス
感染リスクはどのくらいあるのか?
(暴露者がB型肝炎 HBs抗体陰性の場合)
1回の針刺し・切創 6から30%
粘膜(目など)感染する確率がある
咬傷 感染する確率がある
* 職員へB型ワクチン接種を進める。
施設で取り決め(マニュアルを決めておく)
血液体液に暴露(針刺・皮膚切創・粘膜に入った場合)
- 水道水で洗う
- 患者さんの感染症を確かめる(患者がHBV陽性の場合)
- 職員のB型肝炎抗体の確認(職員が抗体陰性、ワクチン未接種の場合HBs免疫グロブリン投与、ワクチン3回接種を推奨)
- 職員のB型肝炎ワクチン接種状況確認よくある質問として、HBVワクチン接種3回後でも抗体が10ml U/ml以下の人の対応はどうすればいいのか?
例:標準予防策の徹底 血液・体液が手の傷や目の粘膜に入らないように手袋・ディスポエプロン・ゴーグル等を着用して防御する。
精神科で職員への暴力・自傷・他害リスクのある患者・HBV陽性患者を担当しない
(可能な範囲で)
HCV:C型肝炎ウイルス
1回の針刺し・切創 1.8%
粘膜(目など)感染する確率がある(HBVより低い)
咬傷 感染する確率がある(HBVより低い)
血液・体液を暴露した場合
- 水道水で洗う
- 患者さんの感染症を確かめる
- 48時間以内 HCV抗体検査
- 1ー6週間をめどに血清HCVーRNAを測定する
- 6ー12ケ月血清抗HCV抗体をモニター
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
1回の針刺・切創:0.3%
粘膜(目など)感染する確率がある(HBVより低い)
咬傷 感染する確率がある(HBVより低い)
- 水道水で洗う
- 患者さんの感染症を確かめる
- 陽性であれば早期(数時間以内に抗HIV薬の服用)
- 近隣にHIV暴露後対応可能な医療機関と連携しておく
- 追跡検査 発症直後ベースライン(今回の暴露か、他の暴露か)
- 6週間後、12週間後、6ケ月後HIV抗体検査
精神科施設血液暴露後対応の難しさ
- 患者が感染症検査に協力を得られない(患者の感染症がわからない)
- 患者の感染症検査に複数人員と時間がかかる
- 検査室がなく外部委託が多い(結果がわかるまで時間がかかる)
- HBV・HIV陽性だった場合、薬剤投与までの時間がかかる
施設内でのマニュアルを準備する。
入院時に感染症の検査を行う。
感染症がわからない、検査後時間を要するケースを想定しておく
例:専門医、医療機関に相談できる体制を整える。
職員のHVBワクチン接種率を上げる。
精神科での血液・体液汚染を想定した個人防護具着脱トレーニングを行う。
例:血だらけで自傷行為を繰り返す患者の対応時など(個人防護具は何が必要か)
結核
結核
精神科の問題点
結核菌:Mycobacterium tuberculosis
結核は、意外にも全身の臓器に発生する。
空気を介して人から人へ感染するのは、肺・気管・気管支・喉頭結核
飛沫核 直径5μ以下の粒子に付着して空気中に漂う。
精神科で発生した場合どのような問題が
- 患者は、マスクを着用できないことが多い
- 閉鎖空間が多く、換気がほぼできない(時間がかかる)
- 陰圧個室がほぼなし
- 拒薬する場合がある
- 集団生活であり長期入院患者が多い(患者間で感染しやすい)
- 診断が遅れる
*胸部レントゲン検査を入院時に撮影できないこともある(協力不可・体動が激しい)
結核のリスク
- 生活の情報が取れないことがある(過去の罹患歴、ホームレス生活等)
- 向精神薬副作用による免疫低下(糖尿病)
- 高齢化
- 喫煙(喫煙所)
- 低栄養
結核を疑うべきポイント
- 2週間以上続く咳(その他感染症を鑑別し除外しておく)
- 微熱が継続している
- 寝汗
- 体重低下
- 胸部レントゲン検査 空洞初見
疑いあれば
- 個室に移動
- 患者にサージカルマスクを着用
- 職員は、N95マスク着用
- 喀痰塗沫PCR検査(通常は、3回行う)
発生した場合
管轄保健所へ相談、連携し接触者健診を行う。
流行性ウイルス
流行性ウイルス
麻疹・水筒・風疹・流行性耳下腺炎
麻疹
伝播経路:空気感染
潜伏期間:14日
感染性期間:発疹出現4日前から発疹出現後4日後
症状:発熱や喉の痛み(カタル期)2から4日
高熱と発疹(発疹期)3から5日
回復期へ
合併症:肺炎・脳炎
発生時どうするか
- 個室対応
- 陰圧個室がない場合の対策を検討しておく
- 患者は、サージカルマスク
- 職員は、N95マスクを着用する
*ワクチン未接種、罹患歴がない職員(麻疹の免疫がない)が曝露した場合は、最初の曝露から5日から最後に接触した日から21日まで就業制限を行う。
風疹
伝播経路:飛沫感染 唾液や分泌物との接触感染
潜伏期間:14から17日
感染期間:発疹出現の7日前から4日後
症状:発熱、発疹、リンパ節腫脹
合併症:妊婦が罹患すると
胎児 先天性心疾患、難聴、白内障
発生時どうするか
- 個室対応
- 患者にサージカルマスク
- 職員へサージカルマスク
- 風疹に免疫のある職員が対応する
*風疹に免疫がない職員が曝露した場合どうするのか
最初の曝露から7日から最後の暴露から21日目まで就業制限
水痘
伝播経路:空気感染 水疱液や気道分泌物との直接接触
潜伏期間:14日から16日
感染期間:発疹出現前の1から2日前から水疱が痂皮化するまで
症状:痒み 発疹 紅斑 丘疹 水疱へと変化する
合併症:肺炎 脳症
発生時どうするのか
- 個室対応
- 陰圧個室がない場合の対策を検討しておく
- 患者は、サージカルマスク
- 職員は、N95マスクを着用する
*水痘に免疫のない職員が曝露した場合
最初の暴露から10日から最後の曝露から21日就業制限
抗ウイルス薬(アシクロビル)曝露後7日間投与
流行性耳下腺炎
伝播経路:飛沫感染 唾液との接触感染
潜伏期間:16から18日
感染期間:耳下腺腫脹の2日前から5日後まで
症状:唾液腺の腫脹や圧痛、発熱
合併症:無菌性髄膜炎 脳炎 難聴 精巣炎
*流行性耳下腺炎に免疫がない職員が曝露した場合
職員は、最初の曝露から12日目から最後の曝露から26日まで就業制限
もっと詳しく知りたい方は
以下 環境感染学会HPガイドラインを参考に
まとめ
- 精神科では、目の粘膜、露出している皮膚を個人防護具でカバーする
- 結核の発見が遅れるため、定期的な胸部レントゲン検査で評価していく
- 流行性ウイルス感染症は、児童思春期病棟では必ず検討しておく
精神科感染対策の第1歩
精神科施設には、子供から高齢者まで入院してくる
つまり、流行性ウイルスと結核まで発生する可能性がある
また、血液・体液に接触する機会は多く、手を掴まれたり、指を噛まれたり
することもある。
針刺事例は、少ないが一般病院では経験しない物品を破壊したものでの受傷
や壁を殴って拳からの出血など血液・体液に接触する機会は多い
COVID19陽性患者で暴れる患者の対応などはトレーニングし、フィエイスシールドを外されたりすることも想定しておく。
患者さんの精神状態に応じた個人防護具の工夫が必要である。