新型コロナウイルスのクラスター後に、病棟で薬剤耐性菌は増加していないか?
受け入れ病棟では、患者同士はマスク着用や手指消毒はできない場合がある。
つまり、患者から患者への感染経路の遮断が困難となる。
新型コロナにばかり注意が行き、
陽性者ゾーンでの
薬剤耐性菌感染対策がおろそかになる。
新型コロナ発症後、高齢の認知症患者さんが、2次性細菌性肺炎になり抗菌薬の使用量が増加する。
そんな時、精神科病院でも抗菌薬が適正使用できれば安心です。
では、どのように精神科病院で
AST活動を行えばよいのか
この記事を読むことで
結論
- 働いている精神科病院の抗菌薬適正使用状況を理解できる
- 耐性菌患者の動向・病棟別・月別の発生数を知ることができる
- 短期・中期・長期での抗菌薬適正使用の戦略が立てられる
なぜ?抗菌薬適正使用が必要なのか
精神科施設には、細菌検査室がなく外部委託での検査が多い。
臨床検査技師が一人もいない施設もある。
薬剤師の数も少なく、マンパワーが足りない。
抗菌薬使用前に培養検査を行わないと、
病気の原因細菌に適切な抗菌薬が投与されないことがある。
・悪さをしている細菌に抗菌薬効果がない場合、症状が改善しない
・体内にいる害のない細菌にも、影響を及ぼす
・細菌が抗菌薬に薬剤耐性を持つ
・抗菌薬副作用、内臓器にあたえる影響
院内感染対策委員会でAST活動を始める
年度で計画を立ててみる
例:令和5年にむけて
- 4月 年間計画を作成
- 5月 現状把握 令和4年度の抗菌薬使用状況確認(薬剤師と連携)
- 6月 現状把握 令和4年度の薬剤耐性菌発生状況確認(臨床検査技師と連携)
- 7月 問題点の把握 月別・病棟別に分析(どの病棟が多いのか)
- 8月 組織体制案を作成・病院管理者へ報告
- 9月 AST(規約・チームメンバー・役割・活動状況)明文化
- 10月 院内感染対策委員会で令和4年度データをもとにASTを提案
- 11月 9月・10月の抗菌薬種類・使用状況・薬剤耐性菌発生数を調べる
- 12月 3ケ月のデータを院内感染対策委員会で報告する
- 1月 データ入力
- 2月 令和5年度の振り返り(次年度感染防止加算を取得する
- 3月 令和6年年間計画報告
一度に多く沢山の事を始めても、うまくいかない事があります。
それぞれの施設での戦力を分析し、計画をたてることをお勧めします。
スモールスタートでも良いです。
病棟単位で血液培養・その他培養検査は採取されているか?
例
・認知症病棟
・身体合併症病棟
・精神科スーパー救急病棟
・慢性期病棟
・依存症病棟
・重度心身症障害児病棟
・精神科新型コロナ受け入れ病棟
月別・抗菌薬種類別Excelシート例の紹介
抗菌薬使用者リスト例
では、抗菌薬使用患者のリストに必要な項目は何か
必要な情報を項目とし、データ化できれば尚便利だと思います。
使用リスト例を紹介します。
各、施設の状況に応じて変更してはいかがでしょうか。
ASTラウンド時の情報収集
- 患者情報:年齢・性別・身長・体重・病名・既往歴・現病歴・アレルギー・生活歴
- 使用抗菌薬:投与量・投与期間・併用抗菌薬
- 腎機能:血液検査データ・CRE・eGFR・Ccr
- 細菌培養検査:血液・尿・喀痰
- 胸部レントゲン・CT検査等
- 臨床症状:身体所見・バイタルサイン
- q SOFA SOFAスコア確認
- 頭部:項部硬直の有無、頭痛、意識障害
- 眼瞼:点状出血、貧血所見
- 鼻腔:鼻汁性状・副鼻腔叩打痛、経管栄養チューブの有無
- 咽頭:咽頭発赤・白苔・粘膜の水疱形成等、う歯・歯肉腫脹
- 頸部:頚部リンパ節腫脹
- 胸部:肺副雑音、心雑音
- 腹部:腸蠕動音聴診、マーフィー徴候の有無、マックバーニ圧痛点の触診
- 背部:CVA叩打痛の確認、肛門周囲膿瘍、褥瘡確認
- 皮膚:蜂窩織炎、損傷は無いか、カテーテル師入部汚染、浮腫
- 抹消:冷たいか暖かいか、(ウオームショックの確認)
- 手のひら・足の裏:オスラー班は無いか
精神科でもASTを始める際に活用できる本
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精神科施設でのAST活動開始まとめ
・AST活動をスモールスタートしてみる。(少しずつ)
・定期的に評価
・短期・中期・長期で対策を準備する
11月に実の父が他界し、ブログ更新を行っていくか悩みましたが
少しでも役に立つ情報があれば、患者さんや家族を救えるかもしれません。
今後も、精神科感染対策の情報をUpしていきます。