- はじめに
- 結論
- 一般のフィジカルアセスメントと精神科臨床のギャップ
- なぜ身体所見のアセスメントが必要なの?
- 精神疾患患者に多い身体合併症
- 抗精神病薬 副作用例
- フィジカルアセスメントの基本は
全身を観察すること - 精神科患者さんのバイタルサインを見る
- まずはバイタルサインを考える
- いつ、バイタルサイン異常を医師へ繋ぐか
- 血圧 基準値
収縮期100〜139mmhg 拡張期60〜85mmhg - 脈拍:基準値60〜100回/分
- 呼吸数:基準値12〜18回
- 体温:基準値 36〜37°
- 意識レベル
- 例:患者の意識レベルは
- 酸素飽和度(Spo2):基準値96〜99%
- 尿量:基準値 0.5〜1.0ml/kg 時以上
- 緊急時のスピードフィジカルアセスメント
はじめに
精神科病院で、看護師として長年働いていると・・・
精神科看護の教育は、勉強してきたけど、
患者さんの身体疾患についての教育は、あまり受けてこなかった。
今更、患者さんの身体疾患と精神症状をどのように考え、
患者さんの身体を観察・アセスメントすれば良いのだろう?
と悩んでいませんか。
この記事では、基本的な精神科でのフィジカルアセスメントをわかりやすく
まずは、バイタルサインから紹介していきたいと思います。
結論
- フィジカルアセスメントを看護に活かす
- バイタルサイン・意識レベルの正常値・異常値を知る
- 早期に身体疾患を見つけて、身体治療の橋渡しを行う
一般のフィジカルアセスメントと精神科臨床のギャップ
一般のフィジカルアセスメント | 精神科臨床 | |
時間的制約 | ・特に想定していいない | ・日常業務で時間的制約がある |
空間と姿勢の制約 | ・広い空間で患者も看護師もベストな姿勢で行なっている | ・保護室や拘束中など、狭い空間で、患者も看護師も制限された姿勢でしか行えない時がある |
正常と異常の境界 | ・はっきりしている | ・はっきりしないことがある |
精神症状による制限 | ・想定されていない | ・問診で十分な情報が得られない ・しばしば患者の抵抗にあう ・痛みの有無など、患者から正確な返答が得られない |
わからない時の助言者 | ・指導する先輩や医師がいる | ・そもそも先輩や医師が、体についてわかっていないことがある |
なぜ身体所見のアセスメントが必要なの?
•入院患者さんの平均年齢が上昇している
•精神科の患者さんが高齢化になると
👇
•加齢による身体疾患の増加・臓器機能の低下
•
•治療による抗精神薬の副作用による身体症状
(例:不穏 👉 身体拘束 👉 ジスキネジア 👉 誤嚥性肺炎)
精神疾患患者に多い身体合併症
- •肺炎
- •胆嚢炎、消化管穿孔・イレウス
- •肺塞栓症
- •外傷・骨折
- •嚥下障害・感染症
肺炎や消化器疾患の発症が多いのはなぜか?
抗精神病薬 副作用例
フィジカルアセスメントの基本は
全身を観察すること
頭頸部
・顔色:蒼白・紅潮・黄疸
・表情:暗い・仮面様
・視力:見え方
・話し方:失語・つっかえながら話す
・聴力:難聴等
動作
・歩行状態:麻痺・跛行
・反応
・振戦、不随運動
・努力呼吸様
全身
・体型:肥満・やせ
・体格:筋肉質等
・発達:低身長など
・体位:姿勢、脊柱の曲がりなど
・体臭:アルコール・ケトン
・発汗:乾燥・湿潤
身なり
・服装:夏なのに長袖
・清潔:髪・口腔・ひげ
・着衣の状態
・化粧の状態 ・装具の有無
精神科患者さんのバイタルサインを見る
バイタルサインとは
血圧・脈拍・呼吸・体温・酸素飽和度・意識レベル・尿量
まずはバイタルサインを考える
病室訪室時、以下のバイタルサインだった・・
バイタルサインの正常値がわからないと異常に気づくことができません。
正常バイタルサインの値を、考えてみましょう!
いつ、バイタルサイン異常を医師へ繋ぐか
1️⃣複数のバイタルサインが異常が示している時
•血圧の低下と、頻脈と、尿量低下と、意識レベル低下など
2️⃣バイタルサインが急激に悪化傾向にある時
•バイタルサイン悪化傾向なのか改善傾向なのか
3️⃣何らかの臨床症状を伴うバイタルサインの異常がある時
バイタルサインの異常と臨床症状がある場合
血圧 基準値
収縮期100〜139mmhg 拡張期60〜85mmhg
1️⃣ 起立性低血圧を疑う場合
•臥位と立位と比べて収縮期血圧20mmhg低下、拡張期血圧10mmh低下、90mmhg以下の場合
2️⃣ 血圧が高い場合
•脳内出血・高血圧脳症・心不全・大動脈解離
3️⃣ 上肢の血圧に左右差がある場合
左右差がある場合、10mmhg以上の差
低い方の上肢の血管に狭窄の可能性がある
4️⃣ 意識障害の患者を発見した場合
頸動脈を触知、触れない場合は心肺蘇生開始
脈拍:基準値60〜100回/分
1️⃣ ショックの場合
•脈拍が上がり、徐脈になる
2️⃣ 脈拍に左右差がある場合
•重篤な動脈閉塞を示唆する
•
3️⃣ 精神科に特有の頻脈
バセドウ病や甲状腺機能亢進
抗コリン作用
呼吸数:基準値12〜18回
必ず観察をしましょう。
1️⃣ 気道の障害は、ないか?
•空気の通り道は、開通しているか?
2️⃣ 換気の障害は、ないか?
•肺は、膨らんでいるか?
3️⃣ 酸素化の障害はないか?
肺胞で酸素化できているか?
体温:基準値 36〜37°
意識レベル
- 意識レベルを発見したら
- まずバイタルサイン測定
- 血糖測定
- 採血
- 頭部CT・MRI
例:患者の意識レベルは
- 問いかけに目を開ける
- 生年月日・名前が言えない
- 手が握れない
GCS・JCSでは?
•GCS E 点 V 点 M点
•JCS レベルは
酸素飽和度(Spo2):基準値96〜99%
尿量:基準値 0.5〜1.0ml/kg 時以上
緊急時のスピードフィジカルアセスメント
・急変時は、全身状態を即座に把握する。
・死亡率の高い疾患から鑑別する。
- 主訴の把握
・まず、何が起こっているのか把握する
・目撃者の情報(意識障害・ショック・痙攣)
- バイタルサインの測定
・血圧、脈拍、呼吸数、体温、意識レベル、酸素飽和度(Spo2)
緊急時
- 頸動脈触知できなければ胸骨圧迫
- 気道確保 頭部後屈 顎先挙上
- 呼吸を確保し、なければ人工呼吸
- 目のアセスメント
・瞳孔の左右差、対抗反射:瞳孔の左右差があれば脳卒中を疑う
・眼瞼結膜:結膜蒼白あれば消化管出血を考える。急性出血では目立たないことがある。
・眼球結膜:黄疸あれば胆管炎、胆嚢炎、胆道閉塞、急性肝炎
- 頸部のアセスメント
・頸静脈の確認:怒張があれば、肺塞栓、心不全、緊張性気胸を考える。
- 胸部のアセスメント
・肺聴診:呼吸Wheeze 喘息・心不全、吸気Wheezeは、気道異物
・呼吸音の左右差:片側の肺炎、気胸・気管支異物を考える。
・心音聴診:心雑音や過剰心音があれば、心不全を考えます。
- 腹部のアセスメント
・腸音:亢進や金属音があれば、腸閉塞を考える
・触診:筋性防御や反跳痛などの腹膜刺激症状あれば腹膜炎
- 神経、四肢、体幹のアセスメント
・四肢腱反射:左右差があれば脳卒中を疑う
・項部硬直:陽性であれば脳炎を疑う
・浮腫:両側下肢、背中、上眼瞼に浮腫あれば心不全を考える。
方側下肢浮腫の場合は、下肢静脈血栓を疑う。
こんにちは、Springです。
この患者さんの通常バイタルサインはどのくらいの値
なのか?
通常のバイタルサインを知らなければ
異常の早期発見は困難となります。
精神症状でうまく症状を表出できない患者さんの異常を
発見するためにも、通常のバイタルサイン・意識レベルを
観察していきましょう。