こんな場面ありませんか
これは感染症ショックの兆候か?
3日前から食事や内服薬を拒否して、輸液(点滴)にて、栄養・水分を調整している患者さん・・
3点拘束中(両上腕、胴拘束)、抹消から点滴が確保されている。
自分で点滴を抜くそぶりはないか・・
突然寒い〜寒い〜と言い出した。
手足を触れると温かい、血圧を測ると88/42mmhg 、熱は38.8° 脈拍数は111回 呼吸数は24回、意識レベルは・・通常がわからないや
バイタルサインからは、多分ショック症状が起きているような・・
どのようなショックが発生しているのかわからない・・どうすれば?
と悩んでいるあなた
結論:特定行為研修のフィジカルアセスメントを学ぶことで感染症ショックやキラー4致死的疾患を見つける視点がわかる!
ショックとは
抹消組織への有効な血流量が減少することにより
臓器・組織の生理機能が障害された状態
精神科でショック症状に遭遇する場面
- 自傷・他害行為で出血が多量の場合
- 拘束中、脱水により肺塞栓になるケース
- 食事や手袋を丸呑み時の窒息
- 消毒薬を飲んでしまい化学性のショック
- 自己管理内服薬の過剰内服時の薬剤性ショック
- 向精神病薬による循環動態への影響(血圧低下・不整脈・Q T延長)
- 心筋梗塞
- 感染性(敗血症)ショック
ショック分類
ショック分類 | 主原因 |
---|---|
循環血液量減少性ショック | 出血性ショック・広範囲熱傷・高度脱水 |
心原性ショック | 急性心筋梗塞、拡張型心筋症
僧帽弁不全症 不整脈 |
血液分布異常性ショック | 感染症(敗血症性)ショック
アナフィラキシーショック 神経原生ショック |
心外・閉塞性ショック | 心タンポナーゼ
肺動脈塞栓 緊張性気胸 |
急性循環器不全の症状
ショックの5Pの観察を!
ショックの5p | 症状のメカニズム |
蒼白(Pallor) | 心拍出量が低下すると、主な臓器の血流を保とうとし、皮膚・筋肉・消化管などへの血流を減少させるために血管を収縮させる
皮膚冷感・蒼白 |
虚脱(Prostration) | 心拍出量がさらに低下すると主な臓器の血流も維持できない
脳への血流が低下 👉 不穏・脱力・意識レベル低下 |
冷汗(perspiration) | 交感神経の亢進・カテーコールアミンの分泌により、抹消血管が収縮する。 👉 皮膚の冷感・湿潤 |
脈拍微弱
(pulselessness) |
心拍出量を維持しようと心拍数は増加。
心拍出量は、低下 👉 抹消動脈の触知微弱 |
呼吸不全
(pulmonary deficiency) |
心拍出量が減少することで組織への酸素供給が低下
腎機能悪化、代謝性アシドーシスを起こす 👉 頻呼吸 |
よくある風景
病棟をラウンドすると病棟看護師さんが、酸素飽和度測定機器にて脈拍数を計測しているが、患者さんの動脈には触れない 触診しない・・しないの・・か・・
触れなければ脈拍のリズムが違う場合、判断できないけど・・
患者からの暴力がない場合は、右左の動脈を触れることが大切です。
以下脈拍の異常を説明
1 頻脈(100回/分以上)
生理的:運動・食事・入浴・ストレス
病的:発熱、貧血、甲状腺機能亢進、不整脈、循環血液量低下、心拍出量低下
2 徐脈(60回/分未満)
生理的:睡眠
病的:甲状腺機能低下、洞不全、低体温
脈拍を触診すると沢山の情報がとれる。
ショック時の血圧指数(ショック状態の患者を発見! 血圧計がないぞ・・困った)
そんな時 触診してみる
- 橈骨動脈が触れるか 収縮期血圧80mmhg
- 大腿動脈が触れるか 収縮期血圧70mmhg
- 総頚動脈が触れるか 収縮期血圧60mmhg
精神科でもキラー4(致死的疾患)は発生する。
キラー4致死的疾患
- 心筋梗塞
- 大動脈解離
- 肺血栓塞栓症
- 緊張性気胸
なぜか?
精神科身体合併症の記事を読んでみてください。
- 糖尿病の患者が多い
- 病態、向精神薬の副作用
- 拘束の患者
- 自傷・他害(転倒時など)
- 外傷(作業療法時のプログラム運動など)
患者さんに胸の痛みがありショック症状があったら・・観察ポイント
バイタルサイン・意識レベル確認 👉 その次に・・
心筋梗塞:患者さんの手を触れよう。
手が冷たい、冷や汗がある。
交感神経が優位になり、抹消血管が閉じて汗をかいている
大動脈解離:血圧を左右計測しよう。
肺血栓塞栓症:頻呼吸、頻脈、口唇チアノーゼ、抹消チアノーゼ、下肢腫脹
ホマンズ兆候(足関節を伸ばしたり、曲げたりすることでふくらはぎに痛みはないか)
緊張性気胸:呼吸音の左右差はないか
頸静脈怒張 口唇チアノーゼ
胸郭運動の左右差
胸郭の拡大
バイタルサインの逆転
- 収縮期血圧<脈拍数 例:血圧 88/45mmhg 脈拍110回
ショックの段階
①手を診る👉 温かい 👉 血流分布不均等性ショック(感染症、アレルギー性ショック)
👇
冷たい場合
👇
② 頸静脈怒張をみる 👉 ない👉 循環血液量減少性ショック(出血や脱水)
👇
あるな・・
👇
③ 両側肺雑音を聞く 👉あるな👉心原性ショック(心筋障害、不整脈)
👇
ないか
👇
閉塞性ショック(気胸・心タンポナーデ・肺塞栓)
まとめ
- バイタルサイン(呼吸数)は重要です。(通常時の呼吸数を把握しておく)
- バイタルサイン・意識レベル計測しショックを判断したら手を触れる
- キラー4疾患の特徴を知り、異常を早期に見つけ医師へ報告する
精神科感染対策の第1歩
フィジカルアセスメントを行うことで、ショックが感染性の敗血症の場合
ウオームショック(血圧が低下していても、手が温かい)
の判断ができる。
患者さんの手に触れる事でショックのサインを見つけることも
感染症診療、感染対策には必要となる。
精神科施設でもこれは活用できる。